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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 896

その安直な発想は、お見合いのマッチングと変わらない。他の出版社でも作家を対談させて稼がせたい企画を持つ人がいれば、顔をつないで欲しいという考えである。
誰と組み合わせて対談させれば売れるのかは、試してみなければわからない。
そこはギャンブルに似ている。自分たちの発想では二番煎じになってしまうのはわかりきっている。ブームが終わる前に流れに乗りたい。
対談本は雑誌の対談企画をまとめた本として、一定の売上があった。芸能人の対談本はその芸能人のファンが購入する。
お笑い芸人、役者、アイドル、ヒット作を出した映画監督など出版社では人脈は財産なので、官能小説家と対談でマッチングに挑戦してくれるのを承諾してもらえるのは難しい。
しかし「パンドラ」ならうまくつないでくれるのではと、ちょっぴり期待して出版社の社長はデビューしたての新人作家を連れて来た。
翌日、AV作品製作の老舗メーカーの社長、聖戦シャングリ・ラのスポンサーが愚痴を島田理沙子にこぼしに来て、新人作家が出版社の社長と酒を飲みに来た噂を、投資家の客から聞いて、ニヤニヤしながら帰っていった。

「AV女優と対談?」

編集者から企画を聞いたデビューしたての官能小説家の新人作家は、出版社で編集者の顔をまじまじと見つめた。
撮影が遅れている人気AV女優に少しでも収入になればと、AV作品製作会社の社長は考えた。法改正で、結果として引退する人気女優まで出てきている。
官能小説では売れず、ミステリーや歴史小説の味付けとして濡れ場を書かせてみたら、他の出版社に引き抜かれかねないので、対談させて稼がせたい出版社の社長は「パンドラ」で会って話してみるとすぐにふたりは意気投合した。
新人作家としては、この企画を断ると依頼を減らされたりしないか不安になってしまい、企画を受けるかどうかの返答を、3日ほど先のばしにした。
対談企画は別のベテラン作家でもいいと思うが、社長がデビューしたての作家のほうが、今後の創作活動に良い刺激になるはずだと上司から言われたと編集者は、困惑している官能小説家に伝えた。

(経験なんていらないのに。どれだけ過去の文章を暗記して、組み合わせられるかの勝負なのに。編集者って上司に言われたら、何でもハイハイ返事してっ!)

若い官能小説家の彼女は、わかっていない。彼女がコンテストに投稿した作品の内容が、AV女優との対談を引き寄せたとはまったく想像できない。
彼女がコンテストで大賞を受賞した小説のヒロインと、とても似た性体験をして、AV女優になった女性がいる。
官能小説家の彼女が、パズルのように組み合わせた小説の内容が、AV女優の性体験とほぼ一致する確率はかなり低い。官能小説家の彼女は、自分の作品の虚構の世界の登場人物に対して、何も思い入れはない。
若い官能小説家の彼女は、世界が想像力に関わる幻想界でつながっていることを知らない。
創作することは、現実の世界を再構成するのと同じこと。彼女のコンテスト応募作品で書かれたことは、現実の世界で起きた出来事を反復していた。
現実に起きた出来事は変わらないが、再構成されることで差異が発生する。その差異がある情報は、読者が記憶することにによって、幻想界の情報を更新する。
幻想界が更新されることで、活動する人の想像力がとらえる情報が以前とは異なるため、現実で再び同じ出来事が起こらない。
ところが、エロマンガ家のメイプルシロップこと緒川翠のように想像力で差異をふくませる段階を省略して官能小説が創作された結果、過去に起きた出来事の再現を、若い官能小説家は書かされたようなものなのであった。

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