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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 887

「ミロのヴィーナス」の背中のなまめかしさとたおやかさ。腰下に巻き付く布の肉感を、繊細かつ動的にひろう流麗なしわの重なり。整った清廉な髪のまとまりと、わずかに口角をあげ微笑みながら結ばれた唇。大理石の艶やかさは、人の肌とはちがう白銀のような冷たさすら感じるほどのなめらかさ。

「ん、隆史さんは、ちょっとフェチなのかしら?」
「もしも世界にひとつだけものが芸術なら、翠も生きる芸術ってことだよ」
「ミロのヴィーナスと比べられたら、勝てる気しないんですけど」
「そうかな?」

たしかに、世界に同じ人間は誰もいない。しかし、同じような考えや、同じような悩みを抱えて、気がつくと孤独を感じている。まるで、既製の壊れた消耗品のように。
無数の情報の破片は、まだ大陸が地続きで、人が散らばって旅立って行った頃からすでに蓄積されている膨大な記憶である。世界で生きる者たちは、その情報でつながっていることに気づいていない。それぞれが個人として生きていると思い込んでいる。
食事をする時、排泄をする時、眠っている時、そしてセックスをしている時など、そうした繰り返されてきた生のいとなみの一瞬にその行為によって、膨大な幻想界につながることがある。
瞬きをすること。息をすること。
すべて繰り返しされてきた膨大な情報の中にある。
完全に幻想界とつながってしまうと、自我を維持するのは難しい。
しかし、世界で孤独を感じて生きている意味を見失った者たちが、連帯感を感じて孤立無援の心から脱する最後の抜け道は幻想界への同調によって、世界とのつながりを再構築しなおすことである。
緒川翠はエロマンガの創作のために、過去のエロマンガを記憶した。
そして、それらの作品がとらえていた幻想界の情報を、自分が創作する時に想像力で組み立て、もう現実世界と同じように虚構の世界があるのを感じながら創作していく。その時、意識は幻想界の情報を引き出している。自分の自我を維持しながら、幻想界とのつながりも感じているので、孤独のさみしさから隆史とのセックスを求めているわけではなかった。
人は孤独のさみしさから、恋愛したり、セックスの快感を求めるというのは、人が定住して作り出したシステムで、そのシステムが常識として刷り込まれているうちは、それがごく普通だと思い込んでいるために疑問すら感じない。
世界の神話は、システムに従って生きるとき、どんなことが起きるかを情報として伝えてくれる。精神分析で社会のシステムが存在していて、心はそのシステムに同調していることに気づき、前時代のキリスト教の教義が世界の常識だった頃のシステムの告解を、対話療法の連想を聞き出す方法で導入しようとした人物が、精神分析の父と呼ばれたフロイトだった。
フロイトは性欲の欲求不満が体調不良まで引き起こすヒステリーの治療に、この方法がとても効果があると確信した。
このフロイトが、精神分析以外に薬物療法を導入した。そして、フロイト自身も、どっぷりはまってしまった。
コカインを万病薬として、ものすごく褒めていた。自分に処方して、患者にも処方して、コカイン中毒患者にしてしまった。
フロイトは、婚約者のマルタ・ベルナイスという若い女性に、こんな手紙まで送っている。
 
「全く、コカインは素晴らしい! 男性の機能まで強くしてくれる! 次にお前に会った時、お前が真っ赤になるまでキスをして、それからコカインの効能で逞しくなった俺のもので、たっぷりと悦ばせてやるからな!」

この当時のコカインの処方記録の中には、

「コカの葉を噛みながら山登りをしたら、朝食も昼食もしない食事抜きでも、全く疲れず夕方まで山登りができました。しかも、爽快感のみで、疲れが全くありませんでした」

というような報告がある。
副作用には全然気づかずに、これはすごい万能薬、アルカロイドはすごい、と言っていた。

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