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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 876

処刑の様子は見せしめのために、江戸時代に民衆に公開されていた。しかし、拷問は公開されていない。
絵師の想像力は民衆に公開していないものを、感じ取って描いてしまったのではないだろうか。
吊り下げられた口を猿ぐつわでふさがれた恋衣と、包丁を研ぎながら見上げる乳母の目線が交わる瞬間、そこには静寂を生む緊張感がある。ふたりとも同じように上半身は裸で、若さと老い、虚無と殺意の表情の対比が拮抗している。腰の衣服の色も芳年は考えぬいたはずだ。
窓の外の闇夜に浮かぶ夕顔の花。
おそらく芳年は描きながら、この花として、虚構の世界の緊張の瞬間に立ち会っている。
風紀を乱すと発禁にされたのは、これから死骸になる、これから人を殺めて鬼婆となる、その変化の直前の緊張が、虚構の物語を描いているはずなのに、現実の緊張を想起させたからにちがいない。
芳年は闇夜の花を添えて描くことで、人が命を奪われる凶事が、そこに花があることのように、死はただ当たり前にあるものであると示してしまった。
安達ヶ原の人食い鬼の昔話は、それが恐ろしく悲しい特別な出来事だと語っているのに、芳年が浮世絵として視覚化したことで、現実の本質、花も人もすべて同じ物質であるという一瞬、生を否定する倒錯をとらえてしまった。
サディズムという倒錯は、人を物にして所有し破壊したいという欲望である。政府から風紀を乱すと言及されたのは、サディズムという言葉がまだ日本になかったからである。
絵師の月岡芳年について、ひたすら美とエロスについて考えて書き続けた文学者の三島由紀夫は、こう記している。

「芳年の飽くなき血の嗜欲は、血みどろ絵において絶頂に達する」

エロマンガ家のメイプルシロップこと緒川翠は、心で感情が昴ぶって、これから何か変わる直前の止揚の一瞬が、エロスだと思うと檜垣隆史に言った。

「男の人は射精した瞬間が絶頂かもしれないから、すごく緊張して世界の時間が止まったと思うぐらいドキドキしてる瞬間のときめきとか、じれったいかもしれないけどね」

隆史は以前に、看護師希望の学生デート嬢だった山科遥に、セックスの途中でまだ危険と判断して中断したら、ひどく拗ねられたのを思い出した。

「隆史さん、今、他の女の人のこと考えてたでしょう。私、なんとなくわかるんだからね〜」

隆史は脇腹を軽くつままれて、何を考えていたか教えてと、緒川翠にせがまれて、しぶしぶ、セックスを中断して山科遥に怒られた話を聞かせた。

「それは怒られるわよ」
「命にかかわる問題だ」
「そう説明しても、なかなか納得してもらえなかったんでしょ?」
「うん。翠、どう説明したら俺は怒られなかったと思う?」
「怒られるしかないときってあると思うよ。セックスするって、特別なことだと思う。そう思う人ほど、途中で止められたら、感情のやり場に困るはず。セックスにあまり思い入れがない、誰でもいいって女の子じゃなかったってこと。すっごく怒られたなら、隆史さんのことを特別に思って怒ったんだと思う」

緒川翠はそう言ってクスクス笑いながら隆史の乳首を弄ると、くすぐったいと隆史がやり返してくる。
じゃれ合いが始まって、雑談から愛撫の時間になった。
宗教や芸術の話から、そこにふくまれているエロスについて、ふたりで会話していて、なぜかふたりは仲良くいちゃいちゃし合うことになってしまうのだった。

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