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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 875

芳年が47歳になって、円熟の時期になり「奥州安達がはらひとつ家の図」は描かれている。題材の安達ヶ原の人食い鬼の昔話はこんな物語である。

昔、京都の公卿屋敷に岩手という名の乳母がおり、姫を手塩にかけて育てていたという。
ある日、姫が重い病気にかかり医者に診せても悪化していくばかり。
藁にもすがる思いで、易者に占ってもらうと「妊婦の生き肝を飲ませれば治る」と岩手は告げられた。
岩手は生き肝を求めて旅に出た。
だが、妊婦の生き肝などたやすく手にはいるはずもなく、いつしか安達ケ原まで足をのばしていた。岩手は安達ケ原の岩屋に落ち着き、妊婦の旅人を待ち続けることにした。
そして姫の身を案じながら何年も経過したある日のこと。
生駒之助と恋衣という夫婦が、旅の宿を求めてきた。しかも恋衣は、岩手が待ちに待った妊婦。
岩手がどのように殺してやろうかと思案していたその夜、恋衣が産気づき、しめたとばかりに岩手は生駒之助に産婆を呼ぶように使いとして走らせた。
岩手は恋衣とふたりきりになると、出刃包丁をふるい、苦しむ恋衣の腹を割き、生き肝を取り出した。
しかし、恋衣は息絶える直前に、彼女がなぜ旅をしていたかを、うわごとのようにつぶやく。
「幼い時に京で別れた乳母を探して旅をしてきたのに、会えずに死んでしまうとは、情けない」と。そして息をひきとる。
岩手が驚いて恋衣をみると、お守りが目に止まる。それは岩手が旅立つ時、姫に渡した物だった。
手にかけた妊婦は、岩手が何年も無事を願っていた姫その人だった。姫に渡すために取り出した肝は、血まみれのまま手のなかにある。
岩手はあまりの驚きと悲しみに気がふれて、そのまま生き肝を喰らい、鬼と化してしまった。以来、宿を求めた旅人を殺し生き血を啜る「安達ケ原の鬼婆」として広く知れわたることになる。
鬼婆はのちに討伐され阿武隈川のほど近くに埋められた。その塚は「黒塚」と呼ばれるようになる。
安達ヶ原の観世寺には、鬼婆の住家であった岩屋、出刃包丁を洗った血の池などが残っている。近くの老杉の根元には、鬼婆となった岩手の墓「黒塚」がある。
謡曲「黒塚」の旅の僧侶、東光坊祐慶が鬼婆を成敗した際に手厚く葬ったと伝えられる塚である。

芳年の「奥州安達がはらひとつ家の図」の浮世絵は、生き肝を取り出すために包丁を臨月の腹に突き立てる瞬間でも、取り出した生き肝を喰らいつく乳母の姿を描いたわけではない。
若い頃の「血まみれ芳年」が描いたとしたら、そうした瞬間を物語から切り離して、取り出してみせたかもしれない。この物語を、芳年はなぜ題材に選んだのかはわからない。
浮世絵師の芳年は、吊り下げられた臨月の妊婦である恋衣を描くために、拷問を受けている女性の逆さ吊りにされている姿を描くために猿ぐつわをされ、どのように髪が垂れ下がっているか、また獄使がどのような表情で拷問をしているかを見るために、伝馬町牢屋敷へ足を運んだかもしれない。
刺されたり、斬られる罪人たちの姿は処刑場に足を運んで見つめれば、絵師は、その凄惨な死にゆく人の姿を記憶して描くことができる。

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