PiPi's World 投稿小説

媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

の最初へ
 850
 852
の最後へ

媚薬の罠 852

彼女はデジャヴをよく感じる子供だった。
後日、夢でみた光景とそっくりな景色だと感じたり夢のなかで自分が言った言葉を口にして、ハッとすることがあった。
中学生の頃に、赤い椿が庭に植えられている古民家のような家にいる夢を、何度もみていた。
その家らしいものが青森県にあることがわかっていた。オシラサマと呼ばれている木の人形も夢に出てきたからだ。
中学生の彼女は、東北に行ったことはなかった。
行ってみたいと思ったが、中学生で旅費もなく、あきらめていた。
デジャヴ(既視感)を感じる夢をみていたことを、すっかりその後は忘れてしまっていた。
彼女は会社に連絡せず、一人暮らしの部屋にも戻るつもりもなく、旅に出た。
無人駅を降りて、切符を木箱に入れた。
一度も来たことがないはずの場所。それなのに、懐かしい感じがする。
途中の神社や地蔵で彼女は立ち止まる。

(夢と同じだったら、この道を、そのまま歩いて行けば……あっ!)

彼女は夕暮れのなかで、赤い椿の花をつけている木を見つけた。
しかし、そこには夢でみた家がない。椿の木も夢のなかでは、これほど大きくはなかった。

彼女が来た道をとぼとぼと肩を落として歩いていると、軽トラックの運転手の女性から声をかけられた。

このあたりは田舎だから、宿屋もない。前は自分の家も民泊をやっていたから、今夜はうちに来ればいいと助手席の彼女に中年女性が言った。
なまりがあってかなり聞き取りにくいのに、彼女はなんとなく、中年女性の言っている意味はわかる。
おれいを言って中年女性の家に泊まることになった。
中年女性の夫は出稼ぎに行っていて、中年女性と娘さんが畑仕事をやって暮らしていた。

柳田國男の遠野物語におしらさまについて書かれた記述がある。

昔ある処に貧しき百姓あり。妻は無くて美しき娘あり。又一匹の馬を養ふ。娘此馬を愛して夜になれば厩舎に行きて寝ね、終に馬と夫婦に成れり。或夜父は此事を知りて、其次の日に娘には知らせず、馬を連れ出して桑の木につり下げて殺したり。その夜娘は馬の居らぬより父に尋ねて此事を知り、驚き悲しみて桑の木の下に行き、死したる馬の首に縋りて泣きゐたりしを、父は之を悪みて斧を以て後より馬の首を切り落とせしに、忽ち娘は其首に乗りたるまゝに天に昇り去れり。オシラサマと云ふは此時より成りたる神なり。

「お馬さんと結婚したの?」

佳乃が、おしらさまの由来の昔話を聞いて、時坂静に質問していた。

農家の中年女性と自分より少し歳上の娘さんも、彼女におしらさまの由来の昔話を話して聞かせた。

中年女性が昔話を話し終えて、あることに気づいて彼女に質問した。

「この左手の甲のアザは生まれつきなんです。痛いわけでもないので、ずっとそのままなんです」

中年女性のおばあさんの手の甲には、やけどの痕があった。
おばあさんは子供のころからだんだん目が悪くなっていき、大人になった頃には、すっかり失明してしまった。
おばあさんの娘、つまり中年女性の母親が、幼い頃やかんをいたずらして、熱湯で火傷しそうになったことがあった。
それを失明していたおばあさんがかばって、手の甲には、やけどの痕が残った。

祖母の写真が残っているが、そのやけどの痕とアザの形がそっくりだと言われ、アルバムを見せられると、たしかに彼女の左手の甲のアザと、中年女性のおばあさんのやけどの痕はよく似ていた。

SNSでこの小説を紹介

レイプの他のリレー小説

こちらから小説を探す