菊谷亨はキャバクラ通いで作った借金の支払いのために、空き巣を行っていた。北條真凛の部屋に無断侵入した手口は、空き巣をして身につけた。
菊谷亨は、求愛ネズミから、北條真凛をレイプしたら、その後は交尾ネズミに変わるだろう。

「初犯であれば菊谷亨は裁判を受けて執行猶予で解放されますが、そうなれば、ストーカー行為はあきらめるかもしれません」

菊谷亨の自宅から、北條真凛の使用済み生理用品などのコレクションが押収されることになった。ＤＮＡ鑑定から、北條真凛の使用済み生理用品だと判明したがアパートの共用のゴミ箱から、北條真凛のごみ袋を持ち去ったと菊谷亨は言い張っていた。真凛の部屋に侵入したことは隠すつもりらしかった。菊谷亨のパソコンには、隠し撮りされた北條真凛の画像が多数、保存されていた。

「北條さん、菊谷亨の部屋に行ったことはないですよね」
「はい、ありません」
「このまま証拠不十分で釈放されたら、菊谷亨は行方をくらますでしょう。そして、興信所などを使って北條さんを探すかもしれません。見つかれば、北條さんだけでなく、時坂さんも被害を受けることが予想できます」
「わかりました、被害届を出します」

北條真凛は、ストーカーになった菊谷亨を裁くために警察に協力することに同意した。時坂静の身に危険が及ぶかもしれないと考えると、鳥肌が立つほど菊谷亨を気持ち悪いと思ったが、勇気を出して行動した。

北條真凛や時坂静を襲う凶事は無事に回避されたが、本条恵美は彼女たちの代わりに菊谷亨に逆怨みされることになる。
本条恵美はいくつものストーカー犯罪を未然に阻止したり妨害し、時には犯人の身柄を確保して、警察に協力していた。

身代わりになり怨まれた相手の因業（カルマ）が深いほど、本条恵美の運命に影響が出るはずだが、彼女が無事なのは、檜垣隆史との関わりだけでなく、檜垣一族の巫女の谷崎麗（たにざきうらら）が助手としてそばにいることで護りの力が働いている。また、ラブホテルにいる幽霊と憑依できる霊媒資質のある清水真奈美がカメラマンの助手でいる。
本条恵美は厄祓いをしているようなものだが、ラブホテルで教祖になる前の北川天に殺された小西真由美の幽霊以外には遭遇したことがないと思っている。
本条恵美探偵事務所の３人は、祟りや霊障で起こされている凶事を解決していることに気づいていない。
祟りや怨霊の力の影響を受けにくいだけでなく、本人たちは自覚なしで護りの力の運命を持つ者として妨害したり阻止してしまう者がいる。
死んで亡霊になってから取り込まれて、利用されるだけでなく、生きているうちに凶事を起こすきっかけを作ったり、自ら凶事を起こす護りの脆弱な者がいる。〈天満教〉の教祖だった北川天は護りを自らの行いで手放していった者といえるだろう。