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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 829

北欧神話のラグナロク。
天にあるギムレーという、太陽より美しく黄金より見事な広間には、天地を滅亡させる炎も届かない。
ここに、永遠に、善良で正しい人が住むのである。さらに、ホッドミーミルの森だけが焼け残り、そこで炎から逃れたリーヴとリーヴスラシルというふたりの人間が、新しい世界で暮らしていくものとされている。ホッドミーミルの森とは、世界樹ユグドラシルの別称であるとされる。
太陽が狼に飲み込まれる前に産んだ美しい娘は、母を継ぎその軌道を巡り、新しい太陽となる。
フェーズDは混乱が終わったあと、本当の滅亡を迎えるまでの、無関心による穏やかな期間である。
すべてのネズミが無関心なネズミになってしまった時、研究者カルフールは彼らを「美しい人たち」と呼んだ。
暴力も争いもセックスもなく、ただ静かに彼らは生きていた。
560日後、出産が停止。実験開始から920日後、最後のオスが死んで、ネズミたちは全滅した。
檜垣隆史の生きている現実世界は、フェーズCとフェーズDの過渡期の兆候がすでにあった。
癌で若くして亡くなった山本直樹は、自分が死ぬという運命を受け入れた時、研究者カルフールが「美しい人たち」と呼んだ他のネズミに対して敵意も憎しみも恐怖もなく、あるがままを受け入れて、肉欲も越えて、おだやかな気持ちで一緒に生きている選択をしていたのと同じように、限られた残りの時間を恋人の原田亮と一緒に過ごすことに、幸せを感じていた。
フェーズCのメスネズミの変化は、生存本能にしたがって行動した結果だが、フェーズDの混乱の中を生き残ったメスネズミの変化は、生き残ったオスネズミが無関心ネズミではなく、メスネズミに求愛し交尾を求めてきたとしたら、再びネズミたちの大きなひとつの群れができあがる可能性があったと思われる。
〈UNIVERSE 25〉の実験で、アルファオスのネズミの王が、フェーズDの混乱後の状況下に生き残っていたとしたら、再びネズミの小さな世界は、大きなひとつの群れとして復興していたかもしれない。
ただ、もうメスネズミも無関心ネズミになり、産み仔ネズミを育てることも、生存本能にあった意欲、それは食べたり、眠る意欲と同じ生存本能を喪失していたら、研究者カルフールは絶望していただろう。
ネズミたちが交尾をしなくても、お互いに毛づくろいをしたり、一緒に餌を食べて、そばで眠っている姿を、カルフールは見つめていた。
無関心ネズミたちの生存本能は、まだ失われていない。交尾を忘れていないオスネズミを1匹、この中に入れてやれば、メスネズミのなかに交尾に応じ、生存本能にしたがって仔ネズミを育て、その仔ネズミたちが増えていくとカルフールにはわかった。
「美しい人たち」と無関心ネズミをカルフールが呼んだのは、このネズミたちは滅亡から逃れる可能性か秘められていると感じたからである。
再びネズミの数が増加して、痛ましい混乱が繰り返されるとしても。
カルフールは、求愛や交尾を忘れていないオスネズミを新たに入れることは、あえてせずに、最後のネズミが息絶えるのを確認して実験を終了した。
混乱で狂暴性が増したり、交尾を忘れたネズミがあらわれないようにするには、ネズミたちが何をすればいいのか、カルフールにはわからなかったからである。

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