PiPi's World 投稿小説

媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

の最初へ
 814
 816
の最後へ

媚薬の罠 816

通っている常連客は、キャバクラ嬢に思い入れの強い客であった。

「私、今月でTiaraを辞めることにしたんだ。今まで本当に、ありがとうございました」

北條真凛は客たちに連絡した。
ある程度は貯金もできたので、半年ぐらい働かずに今後の身のふりかたを考えるつもりだった。
常連客にとって、北條真凛が急に辞めると聞いて、別のキャバクラ嬢を見つけようと考えた者と、北條真凛に執着して、別のキャバクラ店に移ったら連絡してと言う者もいた。
真凛としては、もう年齢を考えて新人からの再スタートはきついと思っている。
Tiaraがリニューアルして、ヌキキャバになることを店長の富士岡弘は、常連客たちに教えてから辞めてくれと、真凛に言った。
口こみの噂で店に人は集まる。
富士岡弘は、キャバクラ嬢を商売道具としか考えてはいなかった。彼がゲイでなければ、キャバクラ嬢たちを遊び相手ぐらいには思ったかもしれない。
北條真凛もキャバクラ嬢を辞めたら、客とのつきあいは、スッパリ切るつもりでいた。彼女も客を恋愛対象として考えたりしなかった。彼女がレズビアンであることも関係があるが、まず金づるだから親切なふりをしていただけで、本当に親身になっていたわけではない。

「え、結婚なんて、あんた頭おかしいんじゃない?」

北條真凛にプロポーズしてそう言われた直後、着信拒否にされた常連客は、暮らしている安アパートの自室でしばらく呆然としていた。
彼は北條真凛がキャバクラ嬢を辞めたのは、自分だけと交際するためだと勝手に思い込んでいた。プロポーズも断られるとは思っていなかった。店に通うためにサラ金にも手を出していた。
彼の努力が全部、一瞬で無駄になった気がした。貢ぐのも、キャバクラ店に通うことも彼が勝手にやったこと。だが、彼は北條真凛にだまされたような気分になっていた。
この常連客は、北條真凛に逆恨みで憎しみを抱いた。どうにかして復讐できないものか考え始めた。

宗教の始まりは、世界への驚きから始まった。たとえば山に巨大な岩がある。岩を見つけた者が他の村人をつれてきて、岩を見せられた村人たちも驚く。こんな大きな岩があることは奇蹟だ、美しい、なにかすごい迫力がある。これは神にちがいないと、みんなで拝む。みんなで一緒に驚き感動することができた、それが宗教の始まりである。
宗教の本質は、本物の奇蹟が起きるとか人知を越えた本物のすごい存在があるということではなく、そこに感動している人の思いがであるから奇蹟が発生する。驚き感動した思い、そのものが特別というわけである。

八百万の神がいるとされている。八百万の神という神道の考えかたは、そのたくさんの神の名前を覚えて拝みましょうとか、それぞれの神にご利益がありますということではない。あなたがすごいと感じたものをその場で神のひとつとして数えてもかまいませんと、神であるものを発見する許可を信者全員に解放してしまった宗教ということに、神道の特殊性がある。
他の宗教では、神の正当性や正しさなどは教団の中枢部の者が決めてきた。しかし、信者側にそれを丸投げするだけでなく、神の発生まで任せてしまって、わざわざ管理しなくてもいいというシステムを作り出してしまったのである。

さて、キャバクラ店という特別なバワースポットで、ファン客がいるキャバクラ嬢のひとりの北條真凛を、この常連客は自分だけの特別な女性だと信じてしまった。
キャバクラ嬢の真凛(マリン)は、彼にとって女神だったわけだ。
この常連客にとって、北條真凛が店を辞めるということは女神の引退であり、女神から人になれば、これほど尽くしてきた自分の努力は報われるべきだと考えてしまった。
努力は必ず報われるとは限らない。
だからこそ、今でも神頼みをする習慣は残った。

SNSでこの小説を紹介

レイプの他のリレー小説

こちらから小説を探す