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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 788

料理人の青年は老婦人から、夫も息子も口頭癌と舌癌で味覚を奪われて死んだことを聞いた。

「私は癌という漢字が嫌いです。だって口を3つも奪って見せびらかしているようで」

息子と同級生だった今の店主は、あの店の週末の常連客だった。

「今でも雑炊、モツ煮、オムライスの味で、亡くなった老婦人やあの店の師匠の足元にも私はおよばないのですよ。だから私は、別の料理でがんばることに決めたのです」

新作スイーツのレシピで思いつめて悩んでいる若いパティシエの女性に高級ホテルのシェフになった男性は、自分の思い出を聞かせた。

そのパティシエの女性が、10歳年下の定食屋の奥さんになった。定食屋の店主は、若く美人の妻が作るプリンが大好きなのである。
この定食屋でプリンを注文する客はまずいない……はずだった。

「なにか甘いものも食べたいな。どこか知らない?」

檜垣隆史が運転手の吉田聡美に言ったのを聞いて、店主と妻が顔を見合せた。うなずきあって、店の業務用の冷蔵庫からプリンを皿にのせて隆史の前に出した。

「咲、ひとくち食べてみて」

隆史にスプーンを手渡され、咲がプリンを食べて、おいしさに驚き、まばたきを連続で繰り返していた。
あまりのおいしさに言葉が出ない状態である。

「吉田さんも、ほら、ひとくち」

店主の妻が、隆史に頼まれスプーンを吉田聡美に渡した。プリンをひとくち食べたあと、ふぅとため息をついた。おいしすぎてため息が出た。

「すごいうまい!」

そりゃそうだろうと思い、店主は隆史にうなずいた。

「すいません、プリン、あとふたつありますか?」
「悪いな、それだけだ」

隆史がおいしさに丁寧な口調になって注文しようとして、店主が即答する。店主の妻は、思わず笑って吹き出しそうになり、店の奥へ急いで隠れた。
冷蔵庫のプリンはあとふたつ。
夫婦で閉店後にプリンを食べて休憩をしてから、片付けや清掃、売上の計算や翌日のおつりの準備などをする。
夫婦が今日1日をがんばったごほうびのプリンだから、店主が出しおしみをしたのが、パティシエの妻にはうれしかったり、おかしかったりして、笑いが止まらない。
本当にかわいい人だと歳上の夫のことを思った。

檜垣家の湯治場のカフェに行くと、以前は慶龍飯店で裏メニューで提供されていた、燕杏が作るクリームパフェを隆史は食べることができる。
そのパフェに入ったプリンと同じかそれ以上のおいしさに隆史が感動していた。
燕杏は主人の徐麗花のために、今は妻の谷崎初音のために、心を込めてプリン入りのパフェを作る。
パティシエの定食屋の店主の妻は、夫に愛情をたっぷり込めてプリンを作る。
隆史はくいしんぼうなので、料理に込められた愛情をおいしさとして感じ取る。その影響で、同席する水野咲や吉田聡美の味覚も同調して覚醒している。

「あー、おいしかった。ごちそうさまでしたっ!」

隆史は本当に満足して、満面の笑みを浮かべている。

「ああ、どうも」
「ありがとうございました!」

隆史たちが店を出ると、食器を片付けしている美人パティシエの若妻に、店主がつぶやくように言った。

「恵比寿様か、大黒様みたいな笑顔の人だったな」

店主の妻は、店に飾りで置いてある恵比寿様と大黒様の木彫りの人形を見て、クスクスと笑ってしまった。

(似てるかも、ほっぺたがぽっちゃりして、あれだけおいしいって、うれしそうに笑って帰ってくれるお客様もめずらしいわね!)

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