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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 785

直樹は自分が死んでゆくことを受け入れて、澄んだ透明なガラスのような微笑を浮かべている日もあった。
貴哉に直樹は自分が死んだあと、原田亮が悲しみに暮れて自殺したりしないように見守ってほしいと話していた。
生きたいとあがいている時や、死を受け入れる前に苦悩している時期が過ぎて、死んでゆく者には、心が嵐のあとで澄みきった青空のように落ち着く時期がある。
原田亮の手を握り、微笑を浮かべてベッドで目を閉じている直樹の表情は、珠理にはなぜか、とても幸せそうに見えた。
山本直樹は自分の命がもう長くないと感じた時、自分の性的嗜好が同性愛だと両親にカミングアウトした。
日本では同性愛者に対する偏見はある。直樹の両親は、息子がどれだけの勇気を出してカミングアウトしたのかを息子と離れて暮らしていても理解した。
愛する人に見守られ、また離れて暮らしている両親からも理解されて、山本直樹は生涯を終えることができた。
珠理の母親は原田亮の同性愛を理解できずに原田亮や珠理と一緒に暮らす家庭を捨てた。もしも、珠理が同性愛の性的嗜好もあると知ったら、母親の真由美はひどく悲しんだのではないか。
山本直樹は短い間だったが、ありのままの自分を自分の愛する者たちに受け入れてもらって生きることができた事だけは幸せだったと珠理は思っていた。
珠理の父親、原田亮は娘の珠理が偏見から差別されるのを愛するがゆえに心配し、同性愛の嗜好を矯正しようとさえした。
理解してありのままでいいと、すぐに受け入れてくれたわけではなかった。
珠理を愛する同性愛者の詠美が、ドラッグの快感に溺れずに、珠理を愛する気持ちが揺るがないのを感じて原田亮は、珠理が詠美を愛することだけでなく、同性愛者の自分自身も許そうと、考えをあらためたのだった。
人は誰も、他人の心の本当に大切なところだけは、思い通りに都合よく変えることはできない。
できることは、自分の考えかたや自分がとらわれている常識に気づくことだけで自分自身でしか、人の生き方というものは変わらない。
原田亮は山本直樹の死によって、真由美が家庭を捨てた時には、まだ自分には珠理がいると思い、感じられなかった伴侶を喪失する悲しみを教えられた。
伴侶の喪失と悲しみを感じて、それでも生きている者たちはいる。
ドラッグディーラーのカズキ。丸鷹商事の女社長の佐伯花凛。高坂貞人に性癖を開花されたふたりは、姿をくらまして逃げた高坂貞人を、今でもずっと、伴侶として愛し続けている。
イザナギは、イザナミのことを黄泉から生還しても愛し続けていた。だから、スサノオは清め祓う雨風や海の神となってイザナミを恋しがった。あまりにスサノオノが泣くので、イザナギはまるで自分の心のなかを見せつけられているように感じたにちがいない。

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