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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 366

ピカソ。
「画集にたまたまあったのがアヴィニョンの娘たちだから、これで話すけど、顔や体をみると鼻の向き腕や足の向き、正面か横向きかどっちって感じ。さっきマティスで見たままの色じゃなくても芸術はいいっていってもどっち向いてるのかはわかる。ピカソは、ひとつの絵の中であっちこっちから見たたくさんの情報をギュッとひとつにまとめちゃった。ダヴィンチの絵や写真にこれができるかって、やっちゃったわけ。視点も自由でいいって固定概念を破ったんだ。俺はビカソなら線のシンプルなイラストがかわいいから好きだけど、簡略化していいっていうのもやっちゃったんだよね、この人。まあ、興味があったら調べてみて。作品数はんぱない人だから」
カンデンスキー。
「この人の名前、感電するのが好き、って覚えると忘れないね。えっと、フーガだね。抽象画を世界で初めて描いちゃった人なんだよ。フーガってなんだかわかる?」
「音楽のフーガ?」
「瑠々、大正解。音感を聴いて絵にしましたって人なんだよ。目に見えて何か形があるものを描かなきゃいけないって思い込みをこの人は破ったんだ」
隆史はここでクラスの全員の顔を見渡して、ちょっと間を作ってから、また話し始めた。
「色づかいも何でもいーよ、物のかたちもひとつじゃなくていいよ、もう見たものじゃなくてもいいんだよ、ってかなり自由だと思うんだけど、まだ思い込みがあるよって気づかせてくれる作品を作った人たちがいるんだよね」
デュシャン。
「絵じゃないけど、泉、って作品だ。瑠々、何だかわかる?」
「……トイレのやつ?」
「そう、小便器を横向きにして、わざわざサインまでしてある。お金を払えば作品を並べていいって展覧会に出したんだけど、何だコレってどけられちゃったんだって。で、デュシャンは発表できなかった作品って写真に撮って雑誌に載せた。これはアートなのかって話題になった。デュシャンが破った思い込みは、芸術ってきれいなもの、美しいものを作品にしなきゃいけないって思い込みだったんだ。モナリザでも、フーガでも、芸術はきれいなものを作品にするもんだって思い込みからは、抜け出せてなかった。それをデュシャンはわざと便器を選んでやってみせた。便器が美しいっていうことを作品にした人じゃないからね」
ポロック。
「これって床にキャンパス置いて底に穴を開けたペンキ缶をびちゃってやったり投げつけたりしたり、筆でびちゃぴちゃ振って飛ばしたりしてるらしい。
黒、黄、黄褐色のコンディション。えっと、瑠々、ホワイトボードに、いつもノートに描いてるネコの絵かいてくれる?」
「ええっ?!」
恥ずかしがりながら、瑠々が描いた。
「はい、かわいい。これを見てネコの顔のイラストっていうのは、まだ思い込みがあるって話をする。よく見て、ホワイトボードにホワイトボード用のインクがついてるってことを、ネコのイラストだと思ったら忘れちゃうか強く意識しないよね。ポロックがやったのは、描いてあるけど何も描いてないってことをやった。キャンパスにインキをびちゃびちゃにしたことで、素材そのものを作品として意識させることをやった」
ウォーホール。
「キャンベルのスープ缶、って作品だね。芸術作品って、なんか特別なもので、身近にないものってみんな思ってないかな。美術館にあるとかさ。これって印刷された作品だし、ウォーホールはよくスープを飲んでたから身近な好きなものだったらしい。ウォーホールは、手描きの一点ものじゃない印刷でもそれが身近なスープ缶でも情報を伝えているなら、それもアートじゃないのか、アートとアートではないものの境界なんてないって、芸術っていうイメージの思い込みや決めつけに作品でちがうってやっちゃったんだ。美術っていうのは常識をどうやって乗り越えてきたかってことを知ることなんだけど、じゃあ、どんな発想をすればいいかってことは俺には教えられない。それぞれ考えながら生きてくれ」
隆史がそう言って、美術教師の山本を見た。
感動した美術教師の山本が目を潤ませながら「檜垣くん、そうなんだよ。芸術って常識で気づかない差別とか思い込みとかも越えられることを教えてくれるんだ。いい授業をありがとう」と手をさしだしてきた。
隆史と美術教師の山本が握手して、クラスメイトの拍手の中でチャイムが鳴り、隆史の美術の授業が終わった。

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