PiPi's World 投稿小説

媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

の最初へ
 272
 274
の最後へ

媚薬の罠 274

「燕杏、檜垣家の本妻が女性とは限らない。谷崎龍之介がわざわざ死んだことにして世間から身を引いたのは、ただゲイだったからって理由じゃない。法律上、籍は入れられなくても、誰が最も寵愛を受けているか、まわりにいた愛人たちにはわかったんだろう。徐麗花は檜垣家の本妻という意味を、檜垣家に仕える愛妾たちのハーレムがあって、そこの女王みたいな意味で考えているんじゃないか?」
隆史は燕杏に、檜垣家の本妻の説明を始めた。
本条恵美や谷崎麗は興味がある話なので、黙って耳をすましていた。
「隆史様、どういう意味ですか?」
燕杏が首をかしげる。
「中国にも冥婚っていう風習はあるな。未婚の死者同士をあの世で結婚させるって考えて、一緒の墓に結婚させる二人を埋葬し、死者の魂を鎮めるというやつだ。檜垣家の本妻っていうのは、死んでもまだ一緒にいて生まれ変わった来世でも、また会うと誓い合う相手のことだよ」
隆史はそう言ったが「綾子さん、俺よりわかりやすく説明して」と頼んだ。
冥婚には、死者のふたりを結婚させる場合と、死者とまだ生きている人を結婚させる場合がある。
檜垣家に妾として嫁ぎ、心が壊れて亡くなったり、子を産んだあとの産褥期で亡くなった人のうち、あまたの死者の一人を代表として、生きている当主が冥婚することで本妻とする。
谷崎綾子がふさわしいか見極めて、と言ったのは、犠牲者に対して冥福を祈る気持ちがなければ、檜垣家の本妻には不適切という意味だった。
「わかりやすくいえば犠牲者の代表って感じだな」
隆史は犠牲者を一人も出さないという目標を持って行動している。だから、冥福を祈り結婚することもしたくない、ということらしい。
「徐麗花がどうしても生きたまま結婚したいなら、死んだことにして一度全部を捨てて、命ひとつで嫁いでくるしかない。そして今まで檜垣家が犠牲にしてきた死者を弔うために毎日祈りを欠かさず行うのが最低条件だ。檜垣家の本妻になるということは、そういうことなんだよ」
谷崎麗が話を聞いて唖然としている。
本条恵美は、たしかに隆史の妻となる人は隆史が、愛人たちの命や心を気づかい続けていることを理解して、協力できる人が望ましい、というのは納得できる気がした。
「徐麗花は燕杏にはすごく優しいけど、それと同じぐらい他の俺の愛人にも優しくできなきゃ、死んだことにして命ひとつで嫁いできても、意味がない。徐麗花みたいに裕福に慣れて暮らしている人間は、命ひとつなんて不安になるんだろうけど、その頼りない不安は、他の人間も同じだから、他の愛人にも優しくしたいと思えるようになってくればいいんだけど。でも、人は自分では変われるけれど、他人を変えることはできない」
燕杏は徐麗花の冷酷さを知っている。
隆史に対しては甘いが、隙あれば相手を利用しようと考えているのが染みついた生き方をしている者があふれる裏社会で、甘さをみせたらつけこまれて、骨までしゃぶられるだろう。
その冷酷さもまた、裏社会で生きるためには必要なことなのだと燕杏は思う。
隆史にも一度だけ「もしもあなたが一時間で私を満足させられなかったら、殺して海に捨てる」と言い放つ冷酷さをみせたことがある。
隆史は命がけの無理難題をあっさり受け入れ、徐麗花の予想以上の結果を媚薬を使い叩きつけておきながら、見返りの報酬を求めずに姿をくらました。
ただ処女を捧げた相手だからという理由で、徐麗花は隆史を求めているのではない。
自分の命は簡単に危険にさらすくせに、相手から見返りを求めず、また敵であれ命を奪うことも嫌う。
隆史が女の敵であるのは間違いない。
惚れさせておいて、あとはどうするかは本人にまかせ、自分は好きなことをしている。
主人として命令するとき、命令に従う下僕は責任を主人にゆだねることができる。
隆史は人に命令するのが得意ではない。
相手が望んだものを用意され、躊躇したり遠慮しているときに、気にせずにうけとれと命令するが、それ以外は命令しない。

SNSでこの小説を紹介

レイプの他のリレー小説

こちらから小説を探す