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媚薬の罠
官能リレー小説 - レイプ

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媚薬の罠 1006

また、檜垣隆史との関係が島田理沙子にはあり、最近の状況である鷺原聖華や水野咲が一緒に暮らしていることも、檜垣隆史からすでに聞いているので説明はいらないことを、島田理沙子を頼って訪ねてきた征一郎に教える必要があった。
そこが曖昧だと、征一郎は島田理沙子を信頼して、隆史との面会についての話を切り出して頼むことができない。
鷺原家が檜垣家に一人娘を差し出して、どんなに景気が悪くても、自分の娘だけは困窮させないように根回しをしていることは、他の来店客に知られたくない。そこもわかっているという意味をふくめて、島田理沙子は「パンドラ」の開店時に自分も檜垣隆史に支援を受けている立場の者だと、あえて過去の苦労話を持ち出して鷺原征一郎に聞かせている。

「評判通り、貴女は見た目だけでなく、すばらしい女性のようです」
「あら、どんな評判かはわかりませんが実際に会ってみなければ、どんな人かはわからないものですわ」

艶然とした微笑を浮かべている島田理沙子に、会いたいので連絡が欲しいとだけ征一郎は言った。
島田理沙子はうなずいた。
征一郎は、これで檜垣隆史のほうから以前に聖華を家庭訪問したいと連絡があったように、連絡があるだろうと確信した。
この夜、島田理沙子が、鷺原征一郎の前で、もう檜垣隆史の名前を口にすることはなかった。鷺原征一郎も檜垣隆史の名前を口はしなかった。
この「パンドラ」は銀座でも、最後の名店と呼ばれている。
例えば最近では、接客のセオリーの結婚についての情報を自店の宣伝のネット上に公開しているクラブのママもいる。
また、ホステスがすでに面接時に「結婚しています」「子供がいて」「彼氏と同棲していて」と面接を担当している本田綾に伝えてくることがある。
困窮していて切羽つまって頼れる人もいないので、すがるようにホステスという接客業に飛び込んできた女性たちに、本田綾は真摯に状況を聞き出し、必要に応じて倉持志織の女性の支援をしている施設へ連絡している。
ホステスとして勤めるようになって、責任者のママや一部の黒服だけが知る他人や客へ口外しない個人情報として、勤務に影響がある事情を把握してもらうために教える情報を、すでにホステスになる以前の面接で、まだ関係の浅い店の面接担当者に話すことは、以前の常識では考えられない傾向である。
プライベートの情報を、必要最低限の相手にしか漏らさない。それすら考える心の余裕がない女性たちが、ホステスとして接客した時に、他人である客の情報をどれだけの意識で漏洩しないように行動できるか。接客のセオリーと共通する情報への気づかいが甘いのは、働く女性だけでなく、客側にも同じ傾向があらわれている。客も働く女性の個人的な事情を聞き出そうとする。他の客の情報を知ろうとする。こうした傾向がより強まっていけば、社交場の暗黙のルールが維持できなくなる。そうした人が接客側と客側で増えた店は、社交場としての役割が無くなってしまう。
「パンドラ」が最後の名店と呼ばれるのは、社交場としての役割が維持されている店という意味がある。
鷺原征一郎と島田理沙子とのあいだには社交場の暗黙のルール、客側と接客側の相手への気づかいがある。
時代の状況を鏡のように反映している街の中で「パンドラ」は檜垣隆史の財力や人脈によって、社交場として維持されている店なのだった。

「鷺原さんか日本に来てると、理沙子から聞きました。咲や聖華に、俺も会いたいので、もし、鷺原さんの御都合がよろしければ、邸宅へ伺わせていただきたいのですが、いかかでしょうか?」

その夜のうちに、銀座から帰宅するタクシーの中で、鷺原征一郎の携帯電話に、檜垣隆史から連絡が入った。

(もしかしたら、檜垣氏はパンドラにいたのかもしれないな)

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