PiPi's World 投稿小説

ふと気がつくと
官能リレー小説 - レイプ

の最初へ
 19
 21
の最後へ

ふと気がつくと 21

「井上由美子さんは、アルコール依存で自助グループに参加していました。飲み続けたら命の危険があると医師に診断されても、止めることができずに苦しんでいたのです。もう一杯いかが?」
俺は動揺しながら、話を聞くためにうなずいた。
「私はなぜ由美子さんが禁酒できないのか探るために、ここに三日おきに来てもらって、禁酒の経過観察と、催眠で記憶を探ることにしました」
「俺が由美子に何をしたのか聞きだしたのか?」
「いいえ。聞き出すことができませんでした。なぜだと思いますか?」
「わからない」
「あなたの催眠の暗示が強いというのがひとつ。でも、もうひとつ理由があります」
「なんだ?」
珈琲を準備しますとすぐに教えてはくれなかった。
そのあいだ、俺は理由を考えていた。


「納得できる答えは見つかりましたか?」
高橋優が二杯目の珈琲をそっと置いた。
「いや、わからない」
「コーヒーを飲みながら聞いて下さいね」

納得して気持ちを整理すること。
忘れることはできなくても、もう過去のできことだとあきらめること。
井上由美子の記憶から俺の存在していた記憶と強烈な性の快感の記憶は消去された。
記憶が曖昧になった。
そのために井上由美子は、納得して気持ちを整理するチャンスを奪われてしまった。

「原罪の意識、人が快感を求めること。それを認めてあるがままの自分を許すことで罪の意識てはない答えをそれぞれ見つけて生きています。恋愛であったり、性癖であったりします」
暗示で記憶を奪われた井上由美子は、情報不足で原罪の意識だけが理由もわからないまま整理されずに残ってしまった。
たとえ記憶が奪われなくても、納得する答えに昇華されなけば気持ちが不安定になった状態。
「井上由美子さんの場合、納得するための手がかりとして、飲酒の酩酊を選んでしまいました。お酒を飲んでいると、自分の意思とは関係なく酔いが起こります」
自分ではどうしようもない気持ちよさに身をまかせること、それが快感。そのとき心の状態は安定している。しかし、その安定は納得して得た心の安定ではないので、かりそめのもの。
また気持ちが不安定になるたぴに、井上由美子は安定を求めて酒を飲んで体に限界をきたした。
「人の体はあまりに脆弱です」
しかし、心が不安定な状態は苦しみでそれから逃れるために井上由美子は飲酒を続けた。
アルコール依存の状態になった。


「井上由美子さんのアルコール依存は、あなたのせいだとは誰も言えません。なぜお酒だったのかは、私にもあなたにもわかりません」
「また関係を持てば由美子は酒を飲まない?」
「そうでしょうね。あなたとの快感と飲酒の酩酊の快感では、井上由美子さんはあなたとの快感を選ぶでしょう。でも、あなたはそれを認めたくない」
「そうだよ」
「井上由美子さんは一ヶ月に一度、ここに報告に来るぐらいでよいほどに心は安定しています。あなたがまた関係を持たなくてもね」
快感を求める気持ちは誰にでもある。
それを井上由美子は認めて自分を許すことができはじめているからだと高橋優は言った。


「あなたは私とはちがって催眠で快感を与えることができます。私はあなたが好きな味のコーヒーを淹れることができました。それはコーヒー豆の味のちがいを私が知っていて、あとは砂糖の量のちがいでどれほどの甘さになるかも知っている上で、あなたの求める味を聞きだしたときに想像して、今日はたまたまぴったりだったということです。コーヒーの味は水やその日の気温、湿度などでも変わります」
「相手の心の状態で影響がかわる?」
「あなたがしていたナンパと同じ、あなたの声かけに立ち止まり、気持ちを許した人がついてくるのでしょう?」
「催眠なら全員立ち止まる。けど、ただ声をかけても100人のうち99人は嫌な顔をするけどな」
高橋優の二杯目の珈琲を飲み終えた。

「あなたの催眠の快感も、催眠を使わない快感も、どちらも相手からすれば本物の快感です。薬物依存やアルコール依存は体を蝕み命を奪いますが、性の快感は命を奪いません。そのちがいをどう思われますか?」

SNSでこの小説を紹介

レイプの他のリレー小説

こちらから小説を探す