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ふと気がつくと
官能リレー小説 - レイプ

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ふと気がつくと 20

「ようこそ、占いの館へ」
「あんた、教会の人とかじゃなくて占い師だったのかよ」
「シスターで、占い師で、セラピストですよ」
占いの館といっても、明るい感じの喫茶店だ。
「占いの館って、こうなんか、薄暗い感じで、水晶玉とかさ、あったりするんじゃないの?」
「何か飲みますか、お酒は出しませんけど」
「ずばり教えてくれ、俺にしかできないことって、なんなんだ?」
カウンター席について、俺はすぐに高橋優に用件を切り出した。


「はい、コーヒー。少し甘めで」
話を聞いてなかったのか、とイライラしながら出された珈琲を一口飲んだ。
「うまい」
「この占いの館のコーヒーはあれで淹れるんですけど、インスタントコーヒーみたいにすぐにはできないんです。でも、すぐに出てきた。なぜだと思いますか?」
アルコールランプとサイフォン。
「俺が出されても一口も飲まないとか思わなかったのか?」
「でも、あなたは飲んだ。そして、うまい、と言った。甘さ加減もぴったり。これが事実ですよ」
俺は思わず椅子から立ち上がった。
「まさか来る時間も、俺の好みの珈琲の味も、わかってたとか言わないよな?」
「言いませんよ。三日前に会ったときのことを、そのコーヒーを飲んでよく思い出してみて下さい」
俺は言われたとおり、また椅子に座りなおして、珈琲を飲んでみた。



「なんてこった。俺に暗示をかけたのか」
「正解です」
にっこりと高橋優は微笑むと、軽くパチンと指を鳴らした。
「あなたが催眠で出会った女性たちの感覚を引き出すように、私もあなたからコーヒーの味の好みを聞きだしました。あとは、今日、この時間に来るように指示した、というわけです」


「あなたには私にできないことができる強い催眠の力がありますが、それで助けられるかもしれない人たちがいます。あと、あなたのことを忘れても、一度覚醒した快感の記憶は消せず、代わりの快感を求めてしまった憐れな子羊たちのことを知っていてもよろしいかと」
「憐れな子羊たち?」
高橋優はうなずくと、俺に喫茶店と占い師の仕事をしながらボランティアでセラピストをしていることを話した。
「そろそろ、もう一人、お客様が来ます」
俺が店の扉を見たタイミングで、高橋優が呼んだと思われる客があらわれた。
「……由美子」
「どこかで会ったことありました?」
「いや、知り合いに似ていた気がしたので」
「偶然ですね、私の名前も由美子なんですよ」
俺は飲み終えたコーヒーカップに目を落とすことしかできなかった。
俺と席ひとつ分を開けて由美子が座った。
「アイスコーヒー下さい」
この場から逃げ出したかった。
でも、俺はできなかった。


一年ほど前に、俺は井上由美子を捨てた。
たしかに俺のことは忘れている。
しかし、俺が珈琲を飲むので、由美子もまねて珈琲を飲むようになった。
俺のことは忘れても、今でもコーヒーを飲むようになった癖は由美子に残っている。
覚醒させた快感のことは「俺とのセックスは普通だった」と暗示をかけて忘れさせたはず。
「調子はいかがですか?」
「禁煙も禁酒もいまのところ問題なしです」
「それはよかったです」
俺とつきあっていたころの由美子は酒も煙草も嗜まなかったはず。
「じゃあ、優先生、またね」
由美子は帰っていった。

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