山手線電マ大会 24
獲物のいない二ヶ月間、田中の欲望は溜まりに溜まっていた。登校初日、早速田中は担任に生徒指導室までゆいを来させるよう要請した。担任は田中が度々生徒指導室でゆいから相談を受けていたものと勘違いしているため、その申し出を快諾した。
指導室のドアをノックする音。「羽鳥です」震えた声で名字を言うゆいの可愛らしい声。
「入りなさい」
厳格な声で、田中は答えた。ゆいを部屋に迎え入れると、田中は休学中のことについて根掘り葉掘り聞こうとした。だが、嘘がつけないゆいの答えはなかなか要領を得ない。
色々な質問でぼろを出してしまい、詰問されたゆいはついに、登校拒否だったことにしてしまったのだ。
「生徒のみんなには、内緒にして下さい」
本当のことを言えずに涙目になるゆい。そんなゆいを、女子生徒をシゴくのが好きな田中は一時間に渡って厳しく説教した。
その内説教の内容は、将との交際中の関係にまで及んだ。
田中はゆいの背後に回り、肩に手を置いて初めて優しい声を出した。
「本当のことを言いなさい。嘘をついてもいいことはないぞ。健康な若い男女が、お互いを求めるのは当たり前のことなんだ。本当のことを言ったら、先生は責めたりしないから」
ゆいはその言葉を聞き、また、嘘がバレたときにもっと厳しく説教されることも考えて正直に答えることにした。
「…本当に…怒りませんか…?」
一時間も説教されていて、ゆいの顔には血がのぼり赤くなっていた。ゆいの後ろに立っていた田中は、ゆいの肩に手を置いて優しく頷いた。
「……しました。今は、別れちゃったけど…」
ゆいは顔を前に戻し、小さな声で言った。台詞の最後は、どこか悲しそうだった。