飼育される少女 13
「不安か?」
クミの態度から察したのか、男はそう切り出した。
今後の事を考えれば不安でないはずがない。
クミはゆっくりと頷いた。
「そうか……まぁ、当然だよな。これで安心するとは思えないが、一応あの弁護士も新居に呼んである。何か不都合があれば言うといい」
自分の身の安全は勿論だが、一番心配なのは子ども達の事だった。
いざとなれば子ども達だけでも逃がそうと思っていた為、クミの味方がいるのは心強い。
不安が全部取り除かれた訳ではないが、多少は安心していた。
それからは特に会話がないものの、意外と早くクミにとっての新居に着いた。
「今日からここがクミちゃんの家だよ」
そう男に告げられ、車から降りると、弁護士が迎えてくれた。
「お待ちしていました」
簡単に挨拶を済ませ、クミは子ども達を連れて中へ入っていった。
生活に必要な物や服は既に用意されており、特に不自由しないようになっている。
子ども達を寝かしつけた後、弁護士を含めた三人で今後についての話し合いをする事になった。
「とりあえずお疲れ様」
夫となる男が、そう言いながら紅茶を差し出した。
「ありがとう……」
クミ自身疲れていた為、抵抗もなくそれを受け取り、紅茶を口に運んだ。
「早速今後について話したい所ですが、まずは一息つきましょうか」
弁護士の一言で、三人は他愛もない会話で、しばしの休息を楽しんだ。
もっとも、クミは雑談をするような心境ではなかった為、口数は少なかったが。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか」
そう弁護士が切り出した時、クミは強烈な眠気に襲われた。
「何か、眠い……かも……」
クミは抗う術も無く、深い闇へと誘われていった。
弁護士と男は顔を見合わせ、不敵な笑みを浮かべていた事をクミは知る由も無かった……
クミが目覚めると、辺りは暗く、手足もうまく動かない状態だった。
「これは何? どうなってるの?」
クミは一人呟くと、扉が開き、決して明るくはないが光が差し込んだ。
突然の光に目が眩み、思わず目を閉じてしまった。
「お目覚めかな? お姫様」
声で弁護士と判断し安堵するも、目が慣れてきて自分があられもない格好で拘束されているのが分かり、クミは怒りを表にした。
「何のつもり?」
威嚇のつもりで声を荒げたが、為す術がないクミに対し、弁護士は嘲笑するだけで何も答えなかった。
「おーう、目覚めたか」
クミの声を聞き付けたのか、先程まで夫の顔をしていた男が来た。
「まさかこんなに上手くいくとはなぁ?」
「お前がクミの親に定期的に連絡すれば捜索届が出る心配も無い」
淡々と語る弁護士に、先程までの優しさなど皆無だ。