アキラ君の「ちょっと待ってよお兄ちゃん!」 37
玄関でお礼を言い、出ようとすると咲良は俺の胸ぐらを掴み引き寄せるとキスをした
「挨拶はこのぐらいするもんやで」
そう言いながら俺を見送ってくれた
帰り道、俺は浮かれることを許されなかった
超ミニなスカートは風に吹かれると捲り上がりそうになり
上着は雨の飛沫で水色のブラジャーをさらに透けさせる
紙袋を胸元で抱えるも、背中と下半身が心許ない
俺の住むアパートからかなり離れた商店街
アパートの近くのスーパーよりもかなり安い物が並んでいる
俺は思わず買ってしまい、片手は傘。片手はおお荷物で長い道のりを後悔しながら歩いた
家に着いたのは六時
お兄ちゃんが帰って来る前に飯を作らないと
ご飯は高速炊飯に設定
味噌汁とサンマに雪花菜(おから)と大根おろしを用意する
あともう一品欲しいなと考えてるとお兄ちゃんは帰ってきた
「あ、お帰り。もうご飯、出来るよ」
タイムオーバー。夕飯はこれで決まりかと考えてると、お兄ちゃんの返事か無いのに気付く
見るとお兄ちゃんは俺を見つめ硬直していた
俺の今の格好は超ミニスカートのセーラー服にエプロン
確かに見慣れない格好だ
「あ、これ?真由美の知り合いのお下がり
どう?なかなか似合うだろ?」
俺はしゃもじを握ったままくるりと回ってみる
勢いを殺しているからスカートはそれほど上がらない物の、お兄ちゃんの視線は無意識で期待のこもった視線が俺の下半身に刺さる
「何か学校がややこしいことになってるんだって。
そのうち連絡来るだろうけど、そしたらこの服が役立つみたいだよ」
俺はお兄ちゃんの視線に気付かない振りして支度の続きをする
「女装科でも作るのか?」
ようやくお兄ちゃんは上がってきた
「残念。共学化」
「まじで?」
「まじで」
俺はエプロンを外し、お兄ちゃんとちゃぶ台を挟み、「いただきます」を言う
食事中は元から会話は無かった
テレビと微かな食器の音が空間を少し賑わせる
しかし、今日は違った
「なぁ、アキラ」
「あぎ(なに)?」
サンマのハラワタをたっぷりの大根おろしでくるみ、頬張った途端に声を掛けられ、俺は慌てる
「その服に水色の下着は止めとけ」
俺は口の中の物をゆっくりと飲み込む
「うん、俺もそう思う
これ、真由美の友達が経営してる下着屋で着せてもらってから着替えてないんだ」
エリさんのお店から咲良の家でのことはもちろん端折って説明した
いくら擬似的とは言え、SEXしたなんてお兄ちゃんには言えない
下着の話をしてから、お兄ちゃんは何を聞いたらいいのか分からなくなってきたのか再び黙々とご飯を食べた
食事が終わると食器を下げ、流し台で水につける
お土産でもあればお茶でも出すが、特にないときはとっとと食器を洗ってしまう
今日は制服を着たままなのでエプロンを着用する
視界の端にお兄ちゃんの視線が飛び込んで来る
そんなにこの格好は魅力的なのかな
俺が食器を洗ってるとお兄ちゃんはお風呂を沸かしに行った
やることを終わらせた俺は二つのグラスに氷水を作りちゃぶ台に置くと着替えに部屋に戻った