アキラ君の「ちょっと待ってよお兄ちゃん!」 27
僕はその下着の上から制服を着る。
すると……下着を変えただけで、鏡に移る僕は、凄く女の子らしくなっていた。
さっきから劇的な変化……さっきのは女装だったのが、今は正真正銘の女の子。
「ふふっ……アキラちゃんの女の子がレベルアップしたんや……ほら、レベルアップの音がするやろ」
何だかそんな音まで聞こえてきそうで、3人で笑い合ったんだ。
でもボクはある可能性の事を思い出し、その笑いは小さくなっていった。
「アキラちゃん、どないしたん?」
恵里さんが心配そうに覗き込んでくる。
「真由美さん、ボクが成修にこだわってた一番の理由は話しましたよね?
この性転換が普通のモノでないって事。
もしボクが女の子として生活してて、致命的な場面。例えば女の子の回りで突然、元の姿に戻ったとしたら…。
そう言う事態も充分考えられるからこそ、ボクは成修に残ると言ったんです。
でもこれじゃ、実家近くの女子校に通うのと、全く変わりないじゃないですか!!」
そう叫んで、仕込みカミソリで傷を負った手を、そっと胸の前に添える。
「アキラくん、いつまでそんなつまらない事にこだわってる気なのよ」
「…つまらないですって!?」
ボクは真由美さんの言葉に、うつむいていた顔をあげる。
「男だから?女だから?
そんなモン、今のテメェにとってはただの状況でしかねぇって事が何でわかんねぇんだよ!?
テメェはテメェ。どんな姿でいようと鳴海アキラだ!」
「ボクはボク……」
真由美さんの言葉に、ボクはショックを受けた。
『ボクが今までこだわってた事って、たったそれだけの事だったの!?』
ボクは真剣な真由美さんの顔を、真正面から見つめ返す。
「真由美さん、ボク…」
後は言葉に出来なかった。
真由美さんの言葉が胸に突き刺さり、瞼の奥から熱い物が込み上げてくる。
『駄目だ……』
ボクの眦から、一筋の涙が伝い落ちた。
真由美さんの手が、ボクの頭に伸びてきて、クシャっと髪を乱す。
「辛いっつー気持ちも分かるけどさ。今の自分を認めないと、先には進めないよ?
これからの事はさ、カミングアウとする手だってあるんだし?」
「ばぃ……」
ボクは溢れ出る涙を拭う。
「所で、ずっと気ぃなっとったんやけどその手ぇの傷、どないしたん?」
横でボクと真由美さんのやりとりを、それまで黙って見ていた恵里さんが近付き、胸に添えていた手を取った。
「これは先生が着ていた制服に仕込んでたカミソリで…」
「はぁ!?それ、薫先輩のジョークじゃなかったの!?」
叫ぶと同時にしゃがみ込み、着ていた制服を調べ始めた。
「あ〜、あるあるぅ。 ちきしょ〜、標準に戻してたから、気付かなかったわ」
「って言うことは、今回の合併先って…」
「そ、アタシらの母校」