アキラ君の「ちょっと待ってよお兄ちゃん!」 13
真由美さんはしげしげと見てくる。
「別に信じてなかったわけじゃないけど、改めて見ると納得だわ」
そこでショーツ一枚という格好だった事に気が付き、慌てて近くにあったタオルケットで体を隠した。
「別に隠す事ないじゃないの。
女同士なんだし…」
真由美さんは不満そうな顔をした。
『もしかしてこの人、状況を楽しんでないか?』
俺は一抹の不安を感じた。
「ねぇアキラ君?」
真由美さんが近付いてくる。
「何ですか?」
俺のすぐ横に座る真由美さんに、顔を向けられない。
すると真由美さんの甘い囁きが、耳を擽った。
『真由美さんの顔が、すぐ近くに来てる!?』
俺はドキドキしながら、真由美さんの次の言葉を待つ。
「アキラ君って、優君のこと、愛してるでしょう?」
「な、なな、何をいきなりっ!?」
俺はビックリして、跳び退る。
「隠さなくってもいいってば。
見れば分かるし」
「え、でも…」
俺が事、ここに至ってもまだ逡巡する態度に、真由美さんは苛立っているようだ。
「俺は男だから?兄弟だから!?
それが何だって言うの!
好きになっちまったモンは、しょうがねぇんだろ!?」
真由美さんは再び俺に近付き、優しく抱き締めてくる。
「もっと自分に素直になりな。
でねぇと…。
じゃないと、…私みたいになっちゃうんだからぁ!!」
「真由美…さん?」
上から、一滴の水が落ちてきた。
「アキラ君って、子供の頃の私に似てるんだよ。
打ち明けたい気持ちを打ち明けられず」
「真由美さん…」
真由美さんは俺から離れ、ベッドの上に腰掛けた。
「アキラ君には話したげる。
私が何でグレたのか」
俺は淡々と話す真由美さんの言葉に、黙って耳を傾けた。
「私が中一の時、好きな人がいた。
年が離れてて、始めはその気持ちに気付かなかった。
その人は戦闘機のパイロットだった。
ある日、その人の乗っていたエンジンにトラブルがあって、緊急着陸をしようと地上に降りてきた。
でもそこに、見学に来てた私がいた。
機体は急上昇して、空の中で、バラバラになった。
『私のせいだ。私があそこに行かなければ』自分で自分を呪った。それからはお決まりのパターン。
でもやっぱりその人の事が忘れられなくて、走り専門のチームに入った。
早く走れば、その分その人に追い付ける気がした。
笑っちゃうわ。
因みにその人は、私の従兄妹だった」
俺は何も言えなかった。
『真由美さんにそんな過去があったなんて…』
気が付いたら、俺は涙を流してた。
「で、優君がまた、その人と性格がそっくりなんだわ。
だから何か、君達の事を放っとけなくてさ」
そう言って真由美さんは微笑んできた。