僕とママ 10
眠るわたしにおおいかぶさる、幼い息子の息づかいが、耳元の髪の毛をふるわせる。
まさか、この子もあの和也君みたいに…。
そんな不安が、アルコールで酩酊しきったわたしの頭をよぎる。
でも次の瞬間、ほんの一瞬の息子の行為が、わたしの疑念や不安を洗い流してくれたのだった。
おでこに触れるか触れないか、くらいの、軽い、キス。
それだけで、このところの息子に対するわだかまりも、和也の脅迫的な性処理も、シングルマザーという十字架みたいなレッテルも、みんな、軽くなったように感じられたのだ。
この子なら、何があってもきっと大丈夫。
悪いことに興味を持っても、きっと帰ってこられる強い子だわ。
そう考えると、ひとりでなんでもかかえこもうとしていた自分が恥ずかしかった。
そして、目の前のこの子が、ひとりの男として成長したのだと、ちょっぴり寂しくもなったけど。
泣き虫でよわっちいくせに、意地悪されても負けずにいい子でいてくれた。
そう思うと、なんだかこの子がとってもいとおしく感じられて…。
立ち去り掛ける、はだかのせなかに向かってつい、聞こえるように。
「…う、………ウウン」
と、我ながら悩ましい声でうめきながら。
寝返りを、うった。
寝返りをうつ、ふりをしたというのが本当だけれど。
立ち去ろうとしていた息子の気配が止まったのが、目を閉じていてもわかってしまう。
ただ、立ち止まって振り返っただろうゆうちゃんが、いったいわたしのどこを見つめているのかは、わからないのだ。
頭を揺すったときに乱れた、うなじの毛なのか。
寝汗にしっとりと湿った、首筋や、鎖骨の辺りなのか。
年頃の男の子らしく、タンクトップ型のマキシワンピの胸元からこぼれてしまいそうな、胸元の辺りかしら。
それとも。
わざと右の片ひざをあげたわたしの、素足をたどった身体の中心部なのか。
それは、目を開けない限りは、わからないのだ。
しかしわからないからこそ、わたしは異様にドキドキしてしまっている。
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ママのうめき声に、なんだか心臓を捕まれてしまったように僕は立ち止まる。
「…っ!?」
自分がいまだに裸のままでいることも忘れて、振り向いた僕はおもわず息を飲み込んでしまった。
右向きに寝返ったママの寝息が、同じ向きに半分以上あふれ出たオッパイ越しにスヤスヤと聞こえてくる。
タンクトップみたいな服の細い肩ヒモがズレて、ほんのり色づいた先っちょのところが、今にも見えちゃいそうだ。
思わず僕は歩み寄って、見えそうで見えないそこをのぞき込んでしまいそうになる。
…いやいや、だめだよ。
僕は頭をブンブンとふって、エッチな気持ちを振り払おうとする。
もぞもぞ、
…パタッ
「…!?」
一瞬目を離したすきに、ママはふたたびあお向けに寝返ってしまった。
そのせいで、ほっそりと長い両腕が、まるで十字架みたいな形に広げられて、床を叩いたのだった。
そのせいでいっそう、胸元の衣服は乱れたまんまでおっきなオッパイが強調されてしまう。
さっき、晴美さんに半ば強引に射精させられたばかりのはずの僕のあそこも、すっかり元気を取り戻してしまっている。
でも僕は、意を決してオッパイから目をそむけながら、ソファーにへばりついていたタオルケットをとって、ママの胸元に掛けてやろうとしたんだ。