僕とママ 7
思えば、あの日もこんな暑い日だったように思う。
『……やめてください………これ以上は、もう………あ、ああっ』
『そんなこと今さら…それに、アンタだってもうこんなに………痛いくらいだぜ、ええ?』
『…たっだいま〜……』
無邪気な変声期前の声と、汗の匂いがアパートの狭い玄関にすべりこむ。
『!?』
『…か、和也?』
『…ママ…?…………パパも、いくら暑いからってそんな格好で…あ、あれ???』
玄関先で立ち尽くす、幼い和也少年が目にしたのは……
『……あ、ママじゃない』
アパートのおとなりさんの玄関口で、おとなりさんのご主人と、汗にまみれていたのは……わたし。
『か、和也くん!?』
『…ユーキのママ……??』
……通販でまとめ買いした安物の下着が足首にからんでる以外は、全裸だった。
相手は、三ノ宮正和。
和也少年の父親。
酒気帯び運転による事故で亡くなった主人の借金返済のため、5年間、わたしは幼い裕樹を育てながら風俗店に勤めていた。
『僕とママ』
そんな店名の、要は人妻派遣のデリバリーヘルスだ。
そこのオーナーが、あろうことか隣人の三ノ宮だったのだ。
ご近所に勤務先のことを知られたくなかったわたしは、口止めを条件に『業務研修』を受けさせられていたのだった。
しかし、和也少年の目撃をきっかけに、その『研修』も終わりを迎えたのだった。
が、その日を境に、脅迫者は父から息子へと引き継がれたのだ…。
xxxxxxxxxx
引き継がれたその翌日、私は和也君に呼び出された。
「和也君やめて。あなたはまだ子供なんだから」
「麻里子は俺の女になったんだ。借金返したいんだろ?」
「・・・。」
和也君は私のおっぱいに顔を埋めてきました。
「すごいよ。おばさんのおっぱいはやわらくて気持ちいいよ。天国だよ。」
着衣のままの両乳房に顔をうずめる、当時まだ小学生の彼の行為にじっと耐えながら、顔立ちは似ていなくとも、目的に対する異様な性急さ、せっかちな空気はさすがにあの男の息子なのだと内心苦笑したように思う。
「…あ?……駄目カズくんそこは、おばさんダメだから………ンッ」
「…気安く呼ぶんじゃねえよ、この……このメスブタ!」
乳首をさぐり当てられてうろたえるわたしに、胸の間からくぐもった罵声が発せられた。
「アンタは、このオレのドレイなんだ…だからオレのことは今日から、ご主人様、だ!!」
xxxxxxxxxx
「ハア、ハア……」
ぽたぽたと、僕のからだから入浴剤混じりのお湯のしずくがフローリングの廊下に落ちていく。
いつものお風呂のあとなら、きっとママに叱られて、自分で床を掃除させられるに決まってる。
でも。
今はそんなこと、どうでもよかった。
それどころじゃ、なかったんだ。
つい、さっきまで。
………。
……。
…。
『フフ…裕樹クンど〜お?……おばさんのオッパイ柔らかい?』
湯気に包まれたふたりきりのお風呂場で、カズ兄ちゃんのママが優しく微笑む。
『う、うん……や、柔らかくて、あったかいよ』
そのくせ晴美さんの僕を見つめる目は、ちっとも笑っちゃいないんだ。
『あ…オバサン』
『なあに?』
『オバサンのオッパイの、ここ…なんだか』
『……アラ、気がついた?』
カズ兄ママの、ちょっと干しブドウっぽい先っぽの部分が、むくむくと立ち上がって来てるんだ。
『裕樹クンにさわってもらえて嬉しいよ、って、言ってるんだよ?』