僕とママ 19
なんだかイヤな臭いが立ち登る。
まるで、現在のわたしの仕事の訪問介護サービスの時に、入れ歯を洗っている時のような。
息をはずませながら、真下から乳先にしゃぶりついているピアス男の、口臭だ。
そういえば、聞こえる声もどこか鼻声だったし、何かの鼻の病気で口で呼吸することが多いのだろう。
わたしの剥き出しの肛門を、丹念になめ始めたスキンヘッド眼鏡の「先生」は、踏ん張ったわたしの素足に自分のものを擦り付けている。
が、ソレは3人のなかでひときわ大きな体格の男の持ち物としては、ソレこそ和也少年レベルの粗末な代物だ。
黒パーカーもそうだ。
偉そうにわたしにくわえ込ませたソレは、大きさこそ立派かも知れなかったが、その亀頭部分は完全に勃起していてさえ、余りすぎた包皮のフードをかぶったままだ。
顔が見えなくたって、伝わるのだ。
相手がどんなに薄っぺらで、思慮の浅い人間なのか。
匿名で書き込まれた、無責任な掲示板の書き込みのように。
そう思ったら、こんな連中にナニをされようが、わたしは大丈夫なのだと確信できた。
抵抗は出来ないまま、されるがままの状態だったけれど。
唾液で滑らかになった尻穴に、指と間違われそうなサイズの「先生」が侵入してこようとも。
臭い息をたちのぼらせながら、両乳首にセルフピアスをほどこされる激痛に襲われても。
痛みに耐えようと歯を食いしばってしまい、怒った黒パーカーに蹴りをいれられようと。
浅はかな相手の要求を、わたしは平然と受け流して見せられるのだと、強く信じられた。
くやしかったら、もっと上手にわたしを翻弄して見せろ。
お前たちなど、わたしから見れば、できそこないだ。
下手くそな物語の、できそこないの登場人物だ。
誤字脱字の多い、てにおはのおかしい、何より人の気持ちを全く理解できているとは思えない内容の、便所の落書きだ。
そんなやつらにトイレとして扱われようと、わたしは何も困りはしない。
されるがままを演じつつ、鼻先で笑い飛ばして見せる。
さあ、おいで。
好きなだけお前の、狂った物語をわたしにぶつけるがいい。
さらに容赦なく加えられようとする責めに耐えようと、心に強く念じた、その時。
ピンポーン。
玄関の、ドアホンが鳴った。
「チッ、こんなときに……」
三ノ宮がカメラを持ったまま、モニターを確認する。
「…はい?」
『お邪魔しま〜す、宅配ピザのPIpizza-LAで〜す!!』
「おうおう、そうか、忘れてたぜ……おい、ところでちゃんと例のモノは…」
『オリーブ全抜きの件でしたら承っておりますよ〜、ご安心ください』
「そーかそーか、まっててくれ今開けるから」
いそいそと出て行く三ノ宮。
ガチャガチャッ…
「…!?」
ドカドカドカ…
「はあ〜い、警察官4人前、お届けで〜す!!」
「「「「!?」」」」
「強迫、強姦、それから6年前の相馬正幸の殺害と、殺人教唆、その他もろもろの疑い、どうぞ召し上がれ〜!!」
なんとものんきな女性警官を筆頭に、10人もいよう私服警官がこの部屋に土足で上がり込んでくるのを聞きながら、わたしは気を失っていた。
やっと、終わるのだ。
長い脅迫の日々が。
長かった、悪夢の日曜日が。
〜Win〜