僕とママ 18
「アア〜、もお、たまんねぇ〜〜!!」
黒パーカーの男が、背後からわたしにしがみついた。
「キャッ!!」
「あ、なんだよズルいな〜、抜け駆けかよ〜!?」
「違げ〜よバカ、押さえつけてるだけだろうがよっ!!」
わたしは必死で抵抗を試みるが、あっさりと黒パーカーに羽交い締めにされてしまった。
「う〜わ〜〜、乳デケ〜〜〜!!」
ピアス男が顔をほころばせながら、ジロジロとわたしの胸元を凝視する。
前開きのファスナーがついた白いジャージパーカーに包まれたわたしの胸が、背後からの羽交い締めでより前へと突き出され、大きさがより強調されてしまっていた。
「どれどれ……うっヒョ〜〜!、や、柔らけぇ〜〜〜!!」
はしゃぎながら、着衣越しのわたしの胸の感触を確かめ始める鼻ピアス。
「ほんとかよ…………オオッ!?……こりゃ確かにスゲェ!!」
背後の黒パーカーも、後ろからわたしの胸をわしづかみにしてくる。
「は、放して………痛いから触らないでッ!!」
あまりにも乱暴なペッティングに、わたしは悲鳴をあげた。
「ナニ、痛い!?…」
ふいに、今まで沈黙していたスキンヘッド眼鏡男が突然言葉を発した。
「……そりゃ困ったね奥さん、ちゃんと、先生が診てあげますからね〜〜!?」
「嫌ッ……ヤメテっ!!………脱がさないでッ!!」
叫び声をあげるわたしを無視して、襟元まで上げてあったファスナーが、じわじわと引き下げられて行く。
「仕方がない、お前が本性を現す手伝いをしてやる。この動画を見る連中はお前の顔には興味ないからな。これをつけるんだ」
三ノ宮が撮影を中断して私に黒い布を渡してくる。手にしてみると、それはマイクロファイバー製の全頭マスクだ。
口の部分だけ穴が開いている。目の部分は開いていないが、布なので内側からは見えそうである。
私の顔が分からなければ、脅しにも使えないし、あの子に見せられてもまさか母親とは思わないだろう。
「いいわ、今の私は立派な母親じゃないし」
私は、顔を隠すことで和也君が言うようなメスブタになった。どうせ弄ばれるのだから服もいらない。すべて脱ぎ捨てる。
「インパクトが足りない、 タトゥーシールを貼ってやれ」
男たちが私の両胸と腹とドテにシートを当ててスプレーで濡らしてから裏紙を剥がす。
「それが今のお前だ」
見下ろしても胸より下は見えないので、姿見の方を見る。すると、鏡に写った私の体に黒い文字で『牝豚』『淫乱ママ』『ドスケベ』という文字がくっきりと見える。
自然に剥がれるまでは息子には見せられない。きっと、また会えてもしばらく蟠りがあるので、あの子の前で肌を晒すこともないだろう。
「ぎゃはは、こりゃあ傑作だ」
人としての尊厳を欠いたわたしの姿を笑う声が、マスクの生地を通して耳に届く。
不意に、バシンとおしりを叩かれ、背中を突き飛ばされる。
「ギャッ!!」
マスクをつけた顔面からわたしは床に激しく激突して、うつ伏せに倒れ込んでしまった。
「いいお尻ですねえ、奥さん?」
叩かれたばかりの部分に、なまあたたかい吐息とささやきが感じられた。
スキンヘッド眼鏡の声だ。
「おい先生、あんまり無茶しねえでくれよ?……オレはこのマスクの口の方に突っ込んで楽しむんだからな。おどろいて噛みつかれちゃこっちはいい迷惑なんだからな」
床に伏せたわたしの頭を乱暴につかみ上げたのは、黒パーカー。
「こら、ちゃんと四つん這いになりやがれブタ奥さん!!…オレのを味わいたくねえのかよ?」
四肢を踏ん張った、ブタと言うより産まれたばかりの子牛のような格好を強いられる。
「そうそう奥さん、手足はピンと真っ直ぐにして……うヒョ、真下から見上げると絶景だな」
四つ足のわたしのからだの下にもぐり込んで、垂れ下がったオッパイに舌や手を這わせ始めたのは、ピアス男のようだ。
「ムッ、ぐ……グウッ」
黒パーカーの持ち物が、マスクの穴からわたしの口をふさいだ。
視界が悪くなっていても、誰が何をしようとしているのか、何となくわかってしまうのが、なんだかおかしかった。