旅好き親父の遺したもの 26
「そう言ってくれると、親父も喜ぶと思うな」
「えへへ、なるほど」
由真が笑顔を見せた。
隣の未来もそれにつられて微笑む。
…明るくて、前向きな二人でよかった。
「えっと、そちらの…しずるさんも、同じなのよね?」
「はい。私も、母が龍一さんのお父さんと…」
「今は、どうされてるの?」
「龍一さんと一緒に暮らしてます。他にも、同じ女の人がいて、楽しいですよ」
「へぇー…」
「そうなんだぁ」
しずるちゃんの言葉に、興味を示す二人。
「しずるちゃん…は、もともとどこに住んでたの?」
「長野です」
由真の問いに答えるしずるちゃん。
「人数が多いほうが楽しいですし、私も、皆さんと仲良くしたいんです」
控えめなしずるちゃんが、自分の意思を前面に押し出すのは珍しい。
でも、そんな彼女が頼もしかった。
そんなしずるちゃんを見て、里美さんが笑顔を見せ
「でしたら、娘たちをお願いしたいな」
「里美さん…いいんでしょうか」
「私は、かまわないよ」
里美さんの代わりに答えたのは由真。
「龍一さん、わざわざ私たちを探して、ここまで来てくれた。そういう人が、悪い人なわけないし…しずるちゃんの表情を見て、楽しいんだなって思って」
「君のお母さんも説得してくれるか?」
「それは私から話すわ。彼女もきっと理解してくれるだろうから」
里美さんが答えた。
そう言うと里美さんは、隣から真理子さんをつれて戻ってくる。
真理子さんもまた、美人な母親、という感じだった。
しばらく奥の部屋で二人で話し合うと、結論がついて戻ってきて
「龍一さん、娘をお願いしますね」
と、二人揃って頭を下げられる。
「もちろんです…親父からも託された、俺の使命ですから」
こうして、さらに二人の仲間が加わるのだった…
緊張感の走った説明のときから数時間、部屋の中は団欒ムードになった。
「今日は泊まっていってください」
「あ…申し訳ないです…わざわざ」
里美さんからそう言われる。
…ホテルの予約もしてなかったし、まあいいか。
「龍一さんがお兄さんで、しずるちゃんが妹…?」
由真がなんだか複雑そうな顔をして考える。
「広い意味ではそうだけど、あまり気を遣わなくてもいいよ」
「お兄ちゃん♪」
未来が悪戯っぽく言った。
「あ、あの、未来さんや…それちょっと恥ずかしい」
「いいですね。お兄ちゃん♪」
ちょ、しずるちゃんまで!?
「あの、普通に呼んでくれればいいんだから」