旅好き親父の遺したもの 17
「あ、あの…」
どうしていいかわからないしずるちゃんは俺に何かを求めてくる。
しかし、そんな彼女でも、
「よろしくね!」
亜美がそう声をかけ、さつきさんは優しく微笑む。
「あ、あの…神城しずるです…初めまして」
「私は篠山さつき。よろしくね」
「籠原亜美。しずるちゃん、私、同い年だよ!」
「え、そうなんですか?」
自然と会話が生まれ、しずるちゃんも表情が柔らかくなっていく。
それを見て、俺は温かい気持ちになった。
その時、携帯のコール音が鳴り響いた。
「はい。」
「龍一くん?」
(聞いたことのない声だ。)
「あの、どちらさまですか?」
「私は、あなたのおかあさんよ。」
「はい・・。」
病気で死んだと思っていた、おかあさんからの電話だった。
「え?か、母さんって、えっ…」
亡くなったんじゃなかったのか!?
「会いたかったのよ、ずっと…」
「え、ちょっと待ってください、俺の母さんは出産後…」
「…ええ、あなたを生んだ後に容態が悪化したのは事実よ…そこから1ヶ月、私は意識がなかったから…でも、今、私はここに生きてるのよ」
…衝撃の事実だった。
「今どこにいます?」
「東京よ。あなたと一緒に暮らしたいから…」
「わかりました。今夜には帰るので…」
しばらくして、旅館を去るときが来た。
しずるちゃんも一緒。
静香さんは「主人と話をつけて、いずれ私もそちらに行くつもりです」と言っていた。
その表情に、固い決意を感じた。
しずるちゃんも連れて、4人で東京に帰る。
…東京には、生き別れの俺の実の母親・夕子さんがいるんだ―
帰りの電車の中、
亜美&さつき「え!!お母さん、生きていたんですか?」
俺「うん。本当のお母さんかどうかまだわからないけど、東京で待っているって。」
しずるさんも自分のことのように喜んでいた。
しずる「良かったですね。」
俺「うん。そうだな。」(でも、会わなきゃいけない人たちも、まだ、たくさんいるんだよな。)
次に会う人は病院で働いてるようだ。