姉、僕、妹、妹 26
「ハァ〜。くたびれた〜。」
「お疲れ様。」
「お兄ちゃんも汗だくだね〜。」
「ま、こんなもんだろ。」
「さて、ちょっと良いかな?」
僕は中学の部長に話しかけた。
「はい?」
「次回の練習までの課題ってあるかな?」
「こっちでですか?これと言っては……」
「そう。なければ全体的にもっと思い切って音を出せるようにお願いしたいな。音は合ってるけど恐々出してるから。」
「分かりました。」
大体のメンバーが楽器を片づけ終える。
「とりあえず皆お疲れ様。今日の午後と日曜日はゆっくり休めるかな?それで、次回の合同練習は本番前日の22日だからね。」
「ハイッ。」
顧問の先生が話し終えると部長が前に出る。
「私から言えることはあんまり無いけど、とりあえず悔いが残らないようにしましょう。以上。」
これで終わるかと思ったが
「指揮者から一言いただこうかしら?」
と部長が僕に振った。
「えと……皆さん大変……上達したと思います……。不肖、私如きが僭越ではありますが……個々の力と…組織力を上手く利用して…一つでも多く勝ちあがりましょう。」
カチコチになって話すと
「緊張しすぎ〜。」
「指揮台に上ってやったら饒舌になるかしら?」
とヤジが飛んできた。
「はいはい。その辺にして。今日はこれで終わり。」
タタン タタン
「ねえ〜お兄ちゃ〜ん。」
「『今日も何か食べたい』って言う?」
「正解〜。」
「はいはい。」
僕は例によってまた沙耶にスイーツを食べさせる。
「紫芋のモンブランと〜抹茶オーレ。」
「ミントティ〜。」
「はい。かしこまりました。」
「はぁ。」
「如何したの〜?」
「また茜に文句言われるよ。」
「でも〜来年からは茜お姉ちゃんと毎日一緒に登校するでしょ〜。それも二年間も〜。」
「そうかも知れないけど……」
「だったら良いじゃ〜ん。」
今はそういう事にしておく事にした。
「お待たせいたしました。紫芋のモンブラン、抹茶オーレ、ミントティーでございます。」
「わ〜来た来た。モンブランと抹茶オーレは私〜。」
「ではごゆっくりどうぞ。」
沙耶は嬉しそうにモンブランを食べ始めた。僕がそれを眺めていると、
「如何したの?お兄ちゃんも一口食べる?」
と沙耶がフォークを勧めてきた。
「あ、気持ちだけもらっとくよ。」