姉、僕、妹、妹 149
ジュウゥ〜ッ
台所に行くとお姉ちゃんが朝食の準備を始めていた。ベーコンの焼ける匂いがしてくる。
「あら、おはよう。お疲れ様。」
「ごめんなさい……」
「何?なんで謝ったの?」
「うるさかったでしょ?」
「まあね。だから『お疲れ様』って言ったのよ。」
「うん……」
「後で沙耶にはちょっと釘を刺しておくわ。」
「ありがとう。」
「良いのよ。」
「ホラ、電車に遅れるわよ。」
「あ、ごめん。行って来ます。」
「行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃ〜い。」
いつものように学校へ向かう。
「おはよう。」
「オッス。今日も『愛しのお姉ちゃん』と登校だな。」
「う……」
「そうやってショック受けるなよ。それより今日から合唱祭の練習始まるぞ。」
「もうそんな時期なんだ……。」
「しっかりしろよ。」
すぐに朝のホームルームが始まった。
「……というわけで自由曲は、組曲蔵王より『春に』に決定です。伴奏者、指揮者希望の方は後で申し出てください。」
自由曲の決定が終わった。その後友人に言われた。
「おい、お前伴奏やんないのか?」
「え?」
僕は何度も伴奏者を務めてきた。しかし、今回ばかりは忙しすぎる。部活と家事で手が一杯だ。その上全体合唱の指揮者を既に頼まれている。
「今回は辞退かな?」
「珍しいな、中学のときは毎年いくつも掛け持ちしてたのに。」
「そもそもそれがちょっとおかしいんだと思うよ。」
「伴奏も指揮も出来るんだから当たり前だろ?吹奏楽部だし。」
その一言を学級委員長が聞きつけた。
「え?何でもできるの?だったら伴奏してよ。自由曲だけでも良いから。」
「無理無理。」
「そんな事言わないでよ〜。課題曲の伴奏は私が他の子に頼んであげるからさ〜。」
「そっちの方が簡単だからね。とにかく今回は無理。」
「学級委員長の私が直々に頼んでるのに〜?」
「委員長に頼まれても無理なものは……」
すると周りのささやきが聞こえる。
「あいつ委員長が頼んでるのに。」
「委員長が頭下げるなんて滅多に無いのよ。」
僕は困って
「本当にごめんなさい!」
深々と頭を下げた。
「んもぅ……せっかく伴奏者見つけたのに……」
やっと委員長は諦めてくれた。
(助かった……)
僕は胸を撫で下ろした。