未成年婚姻法 4
「プールの更衣室はどう?水泳部特権で鍵開けられる」
前を歩いていた美咲が振り返って言う。
彩美は、プールの授業を思い出した。剥き出しのコンクリートに囲まれた暗くじめじめした部屋。
「嫌。ロマンティックじゃない」
「あの、彩美先輩…美術準備室とかはどうでしょうか?美術部員だけが鍵借りられますし…ええと、結構景色よかったりするじゃないですか」
智樹が、やや遠慮がちに彩美に言った。
「まあ、今迄の案の中では一番マシだけど……」
他の部員が来ないとは言い切れないし、他人の存在の有無を無視してもHをする環境として利便性に優れている訳では無い。ベッドは当然として、布団も無いしソファーの様な柔らかい椅子も無いのだ。
「でも、そもそも学校内で初体験に相応しいと言えるロマンティックな場所なんて有るの?」
美咲が彩美に訊ねる。
「有ったとしても今から確保は無理なんじゃ?」
「ムード云々なんて言い出したら、学校を出て家とかホテルに行くしか無いんじゃないですか?」
男子2人も続く。
彩美は、ホテル、と聞いてかばんからスマホを取り出して何か操作し始めた。
「ええと、この市の未成年婚姻特典で、旅行券が即もらえる。それで、今晩、新婚旅行的にちょっといいホテル行かない?」
「あの、僕たちの、これは…」
智樹はもう我慢できないんだ、と下半身を指す。
「うん…それは、ええと、抜いてあげるよ。このあとすぐ」
流石に今夜までお預けなんて無理そうなのでそう答える彩美。ココで夜まで我慢しろなどと言ったら男子2人は暴走しかねない。彩美の相手の智樹はまだしも美咲の相手の司は手に負えないだろう。彩美と美咲は口で処理する事にした。
「た、但しちょっとだけよ。今夜の分を残しておかなきゃならないんだから!」
「兎に角、早くお願いします」
「もう俺達、限界っす」
こうして彩美は智樹のを、美咲は司のを2回処理して何とかパートナーを落ち着かせるのだった。
落ち着いた四人は服を着た。校内にはまだ嬌声が響き渡っていた。
美咲は、今日結婚してもいいように一応の諸手続は頭に入れていて、それが最短で進むように作戦を立てた。
事務室に積んであった婚姻届を持ち、職員室に行った。
証人欄2名を埋めるためだ。
通常父母にしてもらうものだが、両親とも働いていて不在とか、家に帰るより早いとかで、まだ残っている先生に頼んだ。
もちろん、四人とも両親には「この人と結婚するんだ」と連絡を送った。
すぐに市役所へ。
本当は、未成年婚姻の他の特典も受けとるのだが、それは後回しで、二組のカップルは旅行券をゲットした。