若妻たちの秘密 22
「…なんかやけにシーンとしてるような」
「まだ始まる前なんでしょうね」
美桜は葉月の後輩が用意したパンフレットを開く。
「体育館ではライブや演劇、校舎の各教室では出店やゲーム、という風になってますね」
「どっちに行く?美桜ちゃんの好きなほうで構わないけど…」
「校舎を回ってみますか、そのほうが出会いがあるかも〜」
「…出会いってどんなよ」
校舎内はシーンとして生徒の姿は見えないものの、各教室とも飾りつけがされておりこれから迎えるお祭りのムードを感じさせる。
「懐かしいね」
蒔絵は廊下を歩きながら呟く。
この雰囲気を味わうのは高校、大学のとき以来になる。
高校の頃は自身は生徒会長だったので、純粋に文化祭を楽しむのはさらに以前になるはず。
「生徒さんたちが戻ってきて準備を始めるときに不自然に見られないようにトイレかどこかで待機しようか」
「そのほうがいいですね」
各教室のあるメインの通りからは離れた場所に身を潜める蒔絵と美桜。
それから少しして廊下がだんだんと賑やかになってくる。
「戻ってきましたね」
「体育館にでも集まっていたのかな」
「開会セレモニーみたいなのでしょう」
生徒たちは各教室、持ち場に戻って最終準備を始める。
いよいよ文化祭の始まりだ。
廊下から状況を見ながら蒔絵はパンフレットに目を通す。
「どこから回る?」
「クレープとか焼きソバとか、いっぱい食べたいです」
「…相変わらずよく食べる子よね、美桜ちゃんって。朝抜いてきたとかじゃないよね」
「ちゃんと食べました!いつもより軽めですけど」
細すぎるくらいの身体とは裏腹に食べることが大好きな美桜。
いったいどこに吸収されていくのか蒔絵はひそかに疑問に思うのである。
…時間になり、それぞれのブースで店が開く。
「あ、これ美味しいですねぇ(もぐもぐ)」
「…ほどほどにね」
「はいー」
美桜は出店の食べ物を食べ比べしながら、蒔絵とともにブラブラ歩く。
「蒔絵さんもどうです?」
「…まだいいかな」