若妻たちの秘密 21
葉月が去年まで着ていた制服。
保存状態は非常によく、汚れはもちろん皺もない。
まるで葉月が昨日まで着ていたのではないかと思えるくらいだ。
「葉月ちゃんも、これを着て…」
葉月の旦那は教師をしていると聞いた。
それが高校のなのか、はたまたそうじゃないのかは知らないのだが、葉月はその頃から旦那と…蒔絵の妄想は膨らんでいく。
膨らんでいく誇大な妄想。
蒔絵は頭の中でそれを繰り広げながら制服に袖を通し、スカートを穿く。
「着ちゃった…着ちゃったよ…」
小声でそう言う蒔絵。しかしその顔は薄笑いを浮かべ、たまたま部屋の中にあった鏡の前でポーズを作ったり、スカートを翻して楽しんでみたり。
確実にテンションが上がっていた。
その姿は貞淑な人妻ではなく、さながら現役の女子高生のようである。
その姿のまま皆の待つリビングへ。
「あっ!蒔絵さん!私も着ちゃいましたぁ!」
「…仕事早いわね」
蒔絵が戻ると美桜もいつの間にやら制服に着替えていた。
5人の中では一番背の高い美桜、それでもサイズは小さいわけではなさそう。
「蒔絵さん可愛いじゃないですか〜」
「似合いますよ〜」
更紗と梢に言われ頬が紅潮する蒔絵。
「なんだか美桜ちゃんのほうが先輩のようにも見えてしまいますね」
「今に始まったことじゃないじゃん」
「出した甲斐があったもんです」
葉月はしたり顔。
隣で梢が制服姿で並んだ2人をスマホで撮影する。
「…私たちの中の秘密だからね」
「もちろんです」
こうして、蒔絵と美桜の文化祭潜入が決定したのだった。
―潜入当日。
校門の前までやってきて、校舎を見上げる蒔絵と美桜。
もちろん葉月から借りた制服を身に着けて。
「来ちゃいましたね」
「来ちゃったねぇ」
ワクワクが止まらない、という感じでニコニコしている美桜と、苦笑いしながら頭を掻く蒔絵。
「今日は初日だったね」
「初日のほうが盛り上がっていいんじゃないですか?」