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ヤンデレ妻日記
官能リレー小説 - 若奥さん

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ヤンデレ妻日記 28

「あの、衣装とか小道具が必要ならいつでも連絡してくださいね」
橘さんに言われて、人妻が「わかった」と返事した。人妻は何をする気なんだろうか。
「とにかく、彼氏さんもあまり無理せずに、がんばって下さい」
どうやら人妻は俺のことを「彼氏」と橘さんに説明したらしい。ボーイフレンド、セックスフレンド、同棲中の愛人、不倫相手、ひっくるめてパートナーという意味で「彼氏」ということか。
橘さんと人妻は連絡先を交換した。
人妻が多重人格であることも橘さんはあっさり受け入れて、友達になったそうだ。
俺は人妻のスマホから橘さんのブログに書かれた小説を電車で読み始めて、寝る前まで読んだ。
夕食は人妻がピザを注文した。
さすがに疲れたのか、今夜の人妻は俺のそばで、すやすやと寝ている。

三月十日
「橘さんの小説、読んだとき、私、何回も泣いちゃったけど、どうだった?」
「俺も泣きそうになった。でも、読み終わったら、少し元気もらった感じがした」
俺はほとんど徹夜で橘さんの小説を読みきった。
「私の話をしたら、橘さん、泣いちゃったんだよ。でも橘さんのほうがすごいと思うんだけど」
「橘さん、いい人だな」
「うん」
性同一障害。橘さんは男性だけど、物心ついたときには自分の心が女性だと自覚していた。
それじゃいけないと周囲に気づかせないように、かなり無理をしていた。
大学生の頃に恋愛して、年上の女性とつきあった。だが自分の心が偽れずに、自分の心の秘密を伝えたら変態と罵られた。
アダルトショップの店長とSMプレイのパートナーになって、プレイで快感に目覚めながら、自分の心に素直になっていいんだと自覚して、母親にカミングアウトしたり、豊胸手術をした。
アダルトショップの店長が交通事故で死んだとき、店の権利や財産を橘さんに譲渡する遺言状を弁護士にあずけてあった。
橘さんはパートナーを失ったが、アダルトショップの店長が会長をしていたSMプレイサークルの主催者としての活動は続けた。
アダルトショップに来る人たちの相談を聞いてアドバイスをするスタイルも受け継いだ。
橘さんの短編小説はアダルトショップに来た人たちがどうやって危機を回避したか、自分の欲望を受け入れて生きることにしたかについて書かれている。
「今日の午後、橘さんが家に来るよ」
「じゃあ、俺が駅前まで車で迎えに行こう」
俺はトーストをかじりながら言った。
「うん、お願いね。私はお昼ごはん作って待ってる」
11時すぎ、駅前のロータリーで車の中で橘さんを待っていた。
「歩くと少し遠いので迎えに来ました」
「ありがとうございます」
橘さんを後部座席に乗せて、俺は運転しながら橘さんの笑顔をバックミラーで見た。小説の登場人物が実際に現れたような奇妙な感じがした。
先に現実があって小説は橘さんによって書かれたものなのに、小説の世界から来たみたいな感じがする。

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