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ヤンデレ妻日記
官能リレー小説 - 若奥さん

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ヤンデレ妻日記 17

「でも、たいていのレースは中盤で先頭を取った馬を、ユリアファンタジーみたいに、うしろから他の馬をごぼう抜きして、最後にイシンアルファも抜いて一着になるなんてめったに見られない展開だよ。すごく、かっこいいけどね」
「大穴ってやつか」
「そうだね。あと大穴のレースって、予想外の馬が逃げ切ったりするのが多いから、あんなふうにうしろから抜いて勝つ大穴もめずらしいんだよ。
あんなレースを見ると競馬って血統っていうのも、初心者のビギナーズラックもあるんだなって思うよ」
ユリアクリスタルは最後のギリギリで抜いて勝つのが得意な馬だった。
ただゴール前で競り合えば強いが、そこまで追いつけずに負けることが多かった。
今回のレースで、牝馬ユリアファンタジーは父馬の脚力と母馬の勝負強さのどちらも受け継いだことを証明してみせたのだった。
逃げ馬のイシンアルファが途中、逃げきるために脚をためた状況で、他の馬は追いつけなかった。
ユリアファンタジーは他の馬を抜いたところでスタミナ切れになってもおかしくはなかった。
イシンアルファは脚力のある逃げ馬。それは他のレースでも証明されていた。
出走馬のうちで馬券の売り上げが極端に多くなる馬のことを“一本にかぶる”という。断然人気になった馬のことを指す。
また連勝の組み合わせでも強力な馬が2頭いてその組み合わせだけが売れるようなときも“一本かぶり”とか“一本にかぶった”などという。イシンアルファの“一本かぶり”のレースで、人妻はこのレースは、イシンアルファに賭けても配当は低いので馬券を買わないつもりだったらしい。
そんなレースのバドックを見ていた俺が、やたらと気になる牝馬がいると言ったので、当たらなくても自分の賭けた馬を応援する楽しみを教えたくて、ユリアファンタジーの馬券を100円ではドキドキしないだろうと一万円も買った。
「大外一気」つまり、差しきりよりももっと派手な勝ち方をユリアファンタジーはした。レースの途中まで1番後ろを走っていた牝馬が直線で前の牡馬を全て交わして1着でゴールした。
その日、最終レースまで人妻は観戦しなかった。俺に、もう帰ろうかと言った。
その日の一番派手なレースは、イシンアルファとユリアファンタジーの因縁の対決だったからだ。
人妻に競争馬がいろんな意味を背負って勝負していることを教えてもらった。
「俺、馬じゃなくてよかったな」
「私が競争馬だったら絶対に負けない」
「それはすごいな」
「負けまくるなら、徹底して負けるのもあり」
勝てない馬がすごく人気が出たことがある。
いつか勝つだろう、いつ勝つんだろう、連敗記録はどこまで続くのか、そんな感じでその馬が走るレースを楽しみにしていた競馬ファンがたくさんいたそうだ。
「中途半端はダメってことだよ」
初めての競馬で一点買いで万馬券を取った。
「俺、競馬でこれ以上の勝ちはもうないだろうな。観戦はしても賭けるのはもういいや」
「贅沢な旅行ぐらいできる」
「好きにすればいい」
「あのさ、この配当金を全部あげるよ。ケンシロウ、私に一晩買われない?」
「おいおい、もう一人が泣くだろう。配当金を全部あげたら泣き止むかな?」
「破いて捨てそうだよね」
俺とボーイッシュな人妻は苦笑した。
贅沢しようと焼肉屋で食事をした。特上カルビを食べてお酒を飲んで酔っぱらった人妻は「よし、次はホテルだ」と言い出した。

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