他人のモノになった、あの娘 3
何か言いたげな松下のことはしばらく考えず、僕は一目散に走り、同窓会の会場から抜け出た。千秋もそれについてきた。
「水上くん、宮田さん…」
「悪いな、聞きたくなくても聞いちゃったんだからさ」
「真央とジュリアに何も言ってないけど…」
「そろそろお開きだったし、目ぇ覚ましたアイツに見つかったらヤバいでしょ」
「助けてくれたんだ、ありがとう…」
あの頃からオカズに何度も使ったロリ巨乳が、いま人妻となって目の前にいる。
「今の自分の立場分かってる?あいつはもう代償を払ったし」
「儲け話捨ててまで、何か得たのか?」
「破裂音、キンタマ一個つぶれる音。しかも、何でつぶされたか、相手もわからずに本当の理由すら言えないときてるからレア。ああ、プレシャスワン」
千秋は面白そうだと思って見たら登場人物全員が嫌いなった話のように言い放ち、自分はそれなりに満足したと答える。
相変わらず何が善で悪か考えさせられる女だ。仮に露見したところで世の女性が味方になってくれるという狙いもありそうで、単なるサイコには見えない。
「じゃあ、私は…」
「俺は、松下が抱ければいい。もちろん、乱暴にはしないし、できればラブホでじっくり…」
「…はい」
彼女の苛烈さに比べれば、僕はかなり物が言いやすくなり、松下も否応なく応じた。
千秋は「あとは大輔がオトコを見せてやるだけだぞ」と言って僕の肩をポンと叩いて去って行く。アイツも内藤たちと飲むのか、それとも…
「行こうか」
2人になって、僕は松下に短く言うと彼女は黙って後ろを歩く。
「隣、来なよ」
「…うん」
夜道を並んで歩く。会話はない。改まった、詳しい話ならラブホに入ってからでいい、と思った。
歩くこと10分くらい。
暗い中、眩い明かりを放つラブホの前までやって来た。
「本当にいいのか?」
「水上くんは、そういうつもりなんでしょ?」
それまで強張っていた松下の表情が和らいだ。
僕は彼女を連れてラブホにチェックインし、指定された部屋に向かった。
部屋に入ると、彼女はベッドに腰掛けながらはぁーっと長い息を吐く。
「まさか水上くんとここに来るとは思ってなかったわ」
「僕もそうさ」
松下さんは微笑んでいたが、どこか陰のあるように見えた。
彼女は人妻であるからして、他の男とこんな所に来るのはご法度・・・
当然過ぎる反応だろう。
「ジュリア達と水上くんが素敵になったわねって話してたから、後悔とかそんなんじゃないわよ」
「へぇー・・・そう言って貰えてたんだったらあの時告ってりゃ良かったかな?」
他愛もなくそんな話をしているが、松下さんの笑顔は常に陰があった。
昔はこんな笑顔じゃなかった気がする。
「しなくて正解よ・・・あの頃の私は坂東達の肉便器だったから」
彼女のポツリと呟いた言葉は重かった。
それでさっきあんなやり取りがあったのか・・・
彼女は高校はかなり離れた所に行ったとは聞いたが、それはその件が原因なのかもしれない。
「でも、高校でも一緒ね・・・身体目当ての男なんて何処でも居るから」
少し酔ってるのもあって吐き出したい気分なのだろう。