やさぐれ少女たちの日常 3
名門私立の中学だから、この学園には花音のようなお嬢様も数名存在する。
実花たちは花音のことを噂話レベルで知ってはいたが、同じクラスになったときには驚いた。
自分たちの住む世界が違う相手だと、最初は話しかけづらい、接しづらいと思うのは当たり前。
しかし花音はお嬢様キャラにありがちな高飛車な態度は一切見せない、気さくでフレンドリーな人柄で、実花たち仲良し4人組とも一気に距離が縮まることになった。
「あの、皆さん、今度のお休み、予定などおありでしょうか?」
「んー…今のところ特にないかな」
4人を代表して菜摘が答えた。
「そうですかぁ…ちょうどよかったです」
花音は満面の笑みを見せる。
「何がよかったの?」
「ええ、ちょうど4人分ありまして…」
花音が4人組にある紙を見せた。
「特別ご優待券…って、これ隣町にある高級スパリゾートじゃ…」
「ええ、たまたま手に入りまして」
驚きの声を上げる彩夏に、花音は相変わらず柔らかな笑顔で返す。
「どうして花音ちゃんがそんなものを」
「ここ、ウチの親族が経営しているんですよ」
「ま、マジで…?」
「ええ、このお休みの間にお友達を誘ってみてはと言われましたので」
「…私らなんかでいいの?」
愛美が少し申し訳なさげに聞いてくるが
「皆さんは私に家のこと云々、関係なく接してくださって…本当に感謝しているのです…これも感謝のうちで」
「いや、そんな仰々しい…花音はうちらの親友じゃん」
「菜摘さん…」
花音がその言葉に感極まった表情をする。
「あ、ありがとうございます…」
「おいおい、そんなんで泣くなよ〜」
愛美が花音の肩をポンポンと叩く。
「いえ…友達って言ってくださる方が出来たの、私、もしかしたら初めてかもしれなくて…」
「ええっ、意外」
名家で育った花音。
近寄りがたかったか、避けられていたのか、今まで友達と呼べる存在は皆無だった。
「ありがとうございます…では、今度のお休み、楽しみましょうね」
「うん、こちらこそ!」
「あ、皆さんにお迎えの車、ご用意しないといけませんね…」
そういって思案顔になる花音、それを聞いて驚く実花。
…一日が終わる。
下校するもの、部活に行くもの、それぞれ別れる中、花音は一人、ある場所へと向かった。