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未来宇宙史
官能リレー小説 - SF

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未来宇宙史 9

「と思う、ってことは、惑星名があやふやなんだね?」
 特に責めるような口調ではないカイルの言葉にも、リラは申し訳なさそうに頷く。
「はい。と言うか、私の周りに地名というものは無かったと思います」
「地名がない……?」
 カイルとエナが同時に呟く。と同時に、二人の脳内には未開拓の大地が思い浮かんでいた。
「そう……大変だったのね? すぐには戻れないかもしれないけど、出来るだけ協力するわ。リラちゃんも、ここでは気楽にしていていいから、焦らずに故郷探そ?」
 先に口を開いたのはエナ。同情でもしたのか、少し前までの刺のある物言いは、すっかり鳴りを潜めていた。
 極度の箱入り娘である可能性も無くはなかったが、発見したときのリラの服装から、その可能性は極めて低いと判断したようだ。
「ひとまずは俺達と行動をともにしてもらおうと思う。現状このままで移民管理組合に引き渡すのも得策とは考えにくいしな。リラはそれでいいかな?」
 見つかったらそこが宇宙の果てだとしても追い出されると思っていたリラにとって、その提案は願ってもないことだった。
「何の問題もないです! でも、いいんですか?」
「え〜、なにがぁ〜?」
 すっかり気が抜けて机に突っ伏しながらやる気の無い声を出すエナ。
「例えどこの誰かはわからずとも、俺達に危害を加える気のない人を敵対視はしないよ。長旅の予定だったし、話し相手は多い方が助かるしね」
「話せる範囲で構わないから、生い立ちとか話してくれればいーよ。ついでに故郷についての手掛かり、みつかるかも知んないしさ」 カイルとエナに畳み掛けるように言われ、面食らってはいたものの、ひとまずの安息にほっと笑顔になるリラだった。
「で、あとどんくらいで着くのよ?」
 少し責めるような口調でエナが言い放つ。
「そうだな……スターゲートまでならあと2〜3日といったところか」
「スターゲート?」
「そっか、リラはこの辺の事情は詳しくないんだっけ?」
「この辺と言うか、宇宙に出たのも初めてです」
 じゃあ地球へはどうやって来たんだ、という疑問を呑み込んで、寝ている間に運ばれてきたんだろう、と合点する二人であった。
「有り体に言うと、惑星間の関所、と言うか拠点だな。中には惑星並みの機能を有しているところもあるしね」
「残念ながらスターゲートにはないけどねー」
 さも退屈そうにエナが付け加える。
「そう言うなよ。磁界が安定していれば、ガンダルヴァまでひとっ飛びな訳だし」
「安定してなかったら?」
 さも当然の疑問。
「もれなく無期限滞留か、もしくは道中で燃料補給しつつ地道に向かうか、だな」
「えー……二、三年かけてぇ〜?」
 そうなのだ。もし短縮航路を使わなければ優に二年はかかる。たった一月、二月で根を上げるエナのことだ、間延びした声に力が入るのも無理はない。
……無論、力が入っても語気が強くなるわけではなく、間延びする間隔が延びるだけだが。
「まぁしょうがないだろ。と言っても、道中惑星はいくつもあるわけだし、何もない移動時間の方が少ないんじゃないか?」
 なんとかエナのご機嫌を取ろうと画策するカイルだったが、当の本人は別の意味でとらえたようだ。
「それはカイル次第ね〜」
 と意味ありげな視線を投げかけては、手を足の付け根に置きながら足を組み替えて猫なで声を出す。
 リラが居ることを意識してないようなエナのその素振りに、ばつが悪そうな顔で抗議するも、カイルの真意が伝わっているかどうか……。
「今退屈してるのに、明日退屈しない保証はないんじゃない?」
 そもそも今退屈だったんかいと言う突っ込みを耐えつつ、一理あると感じたカイルではあったが、その先に言わんとすることまでは読み取れなかったようだ。
「つーまーりー、親睦も兼ねてえっちしよってこと!」
「はぁ?」
 気の抜けたカイルの声と同時に、小さな悲鳴がリラから発せられたが、そこに気付く余裕を作らせずにエナが畳み掛ける。
「ほら、よく言うじゃない? 肉体関係を持った男女には情が生まれて、その距離を縮めやすいって!」
「いや初めて聞いたぞそれ……エナ理論なんじゃないのか? それに、その体のこと忘れている訳じゃないよな?」
 カイルの反論にふふん、と鼻を鳴らしつつ、そのしなやかな指先をカイルに向けるエナ。
「カイルが中に出さなきゃいいんじゃない」
 反論のため、息を大きく吸ったカイルに対し、矢継ぎ早にエナが紡ぐ。
「もちろん、先走りもだ〜め!」
 楽しみねー、と続けて更にカイルの出鼻をくじき、席を立ち、リラのもとへ向かうエナ。

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