いずれにせよ、まさぐる手に力が入ることだけは確かだった。
「だめ……もうちょっと優しく……」
　雰囲気に呑まれたのか、敏感になっている身体にカイルの荒々しい手つきは刺激が強すぎたようだ。
　それでも言い方がまずかった。甘えるような口調で言われれば逆効果になるのも頷ける。結果的にカイルの愛撫に熱が入ることになった。
　ほとんど服の意味をなさない、ただ乗っているだけの布のもどかしさに鎌首を擡げる熱量の塊をエナに押し付けつつ、胸の先端に舌を這わせる。
　未熟な果実は甘酸っぱい味とミルクの香りを漂わせ、ぬらぬらと唾液で光り、オスを誘うように揺れていた。
「お前って想像以上にエロいよな」
　無意識に口をついて出た言葉にカイル自身驚きながらも、心の中で反芻し血をたぎらせていた。
　触れる度にビクビクと打ち震える身体を前に、徐々に正気を失っていくカイル。
　対して、まさぐられる度に嬌声を上げるエナ。
　まさに獣のまぐわいのような絵図に、次第に興奮が高まっていく。
　決まりなどなくあちこちに手を這わす。それに答えるように手首を探す。それの繰り返しでいつしか花弁は濡れそぼり、肉棒の先からも滴り落ちるものがあった。
「ねぇ、きて……カイル」
　鼻にかかるような甘い声、まだ味わいたいという気持ちも吹き飛ぶような誘いにわずかに残った理性の欠片も溶けて消えた。
「いくぞ…」
　喉がカラカラに渇いているせいで思うように声が出ない些細な苛つきに背中を押され、乱暴に屹立したものをピンク色の粘膜に突き立てる。
「きゃうんっ！」
　普段なら有り得ない声、苦痛と快楽にカイルから視線を外し、あたかも恥ずかしがっているかのように瞼を閉じ頬を紅潮させる仕草に、エナを気遣うことも忘れ抽迭に没頭する。
「ちょ…っと、カイル、嬉しいけどっ、まってっ」
　飛び散る紅白の飛沫も厭わず愛してくれるカイルに、流石のエナも制止する意思を見せる。
　行動は伴っていないが。
　形だけは体(てい)を保つように、開かれてカイルに向かって伸ばされるエナの両手。しかし、破瓜の痛みからか、はたまた充足感からか、エナの焦点は定まらず、無造作に伸ばされるだけに留まっている。
　不安定な抽迭を繰り返すカイルにとって、その手は格好の支えに見えた。

　思わぬ手首の拘束に体の芯を震わせて答えるエナ。
　いつしか二人は快楽を貪るだけの動物となっていた……。

　そこからの二人の記憶は曖昧で――ただ時折思い出すカイルの血走った眼が、まさに今、この宇宙船の中で相見えることとなってしまったことに対して、懐かしいような、気恥ずかしいような、また少し妬けるような感情を抱いていくエナ。
　とは言え、このまま手をこまねいていては、獣耳の生き物の精神衛生上よろしくはないだろう、という結論に至り、エナは恐る恐るながらもカイルの服の袖をつまんで制止する。
「んぁ？」
　目は正気じゃなさそうだったが、エナが心配するほどには獣耳に執心していたわけではないようだ。気の抜けた返事をしながらカイルがエナを見やる。
「いきなり噛みつかれたらどうすんのよ……」
　半ば呆れ顔を見せつつ、先程までの内心の焦燥を胸に押し込む。
「いや、大丈夫だろ」
　と獣耳生物付近をまさぐるカイル。
「なにを根拠に……」
　平静を保てるようになったエナは完全に呆れ顔だ。もっとも、危険な生き物なら、そもそもつついた時点で攻撃されているだろう、との考えは両者ともに持っていたが。
「よっ、と」
　軽い掛け声とともに、獣耳生物の首を掴み持ち上げるカイル。