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未来宇宙史
官能リレー小説 - SF

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未来宇宙史 3

 唖然とした表情のエナを横目で見ながら、カイルは懲りずにネコミミ(?)への果敢なアタックを試みる。
「ひゃぅ……」
 そんな声がネコミミの持ち主から出されたものだからカイルの好奇心は最高潮に達した。
 差し出す手はさながら千手観音の様相を呈した。
 素早く正確につつく、つつく、つつく。
 その異常な行動に、しばし呆気に取られていたエナも危険を察知せざるを得なかった。
「ちょっとカイル……!」
 咄嗟に思い浮かぶのは先立っての話題、エナの処女喪失の件である。
 呼びかけても血走った目で全くの無反応、まさにあの時と同じ――。
 エナの逡巡のうちに流れ込む忌まわしきも甘美な記憶。
 きっかけは何だったのであろう。今となっては確かめる術すらあやふやなものになってしまったが、事実として残っているのはエナの部屋にカイルと二人で居たということだけだ。

 女の子らしいパステルカラーを基調とした配色と申し訳程度のヌイグルミの類。思春期特有の甘いミルクのような香りに囲まれながら談笑に花を咲かせていた。
 いつもの風景。何日かに一度開かれる会合。ありきたりの穏やかな時間。
 カイルにとっては何の意識もない日常だったが、エナにとってはやきもきするような毎日だった。
 そもそもこの会合を開くまでにどれだけの労力を費やしたことか。
 何故こうも鈍感で消極的なのか。もう好きな人にしておくのやめようかなと何度思ったことか。
 それでも恋心に抗うことが出来なかったのはカイルの持つ優しい雰囲気のせいか。
 それとも内に秘めたる魅力のせいか。
 いずれにせよ、エナが求めているのは今までカイルに仕掛けた小細工の成果。
 今日もまた、通販で買った、効果のほどは妖しい安物の媚薬を飲み物に混ぜるという手段でカイルをけしかけることにした。
「で、何だっけ?」
「え? あぁ、そうそう、宇宙に出たら食べたい果物の話だったよね?」
 媚薬に思考を奪われていたエナが、カイルの問いに対して平静を取り繕う。
「宇宙の果物かぁ・・・。そうだ!俺はまだ一度もお目にかかった事は無いけど、惑星ママンゴで採れるマダラメロンは一度食べたら絶対に忘れられない珍味だって聞いた事があるから、一度食べてみたいもんだなぁ・・・。」
そう言いながら媚薬入りジュースの注がれたコップを手にとって口に運ぶカイル。
(やった!飲んだ!)
それを確認したエナは心の中でガッツポーズを決めた。
「・・・ん?どうかしたか?俺の顔じ〜っと見つめて・・・。」
「う、ううん!何でもないわ。」
エナは慌てて首を横に振って話題を変えた。
「ねえ、カイル。私達、もうすぐ20歳だけど・・・。そうなったらカイルは宇宙に旅立っちゃう訳だよね?」
「そうだな。今から楽しみだよ。」
「カイルは、その・・・一緒に宇宙に連れて行くパートナーとかは考えてないの?」
「うん、全っ然考えてない。」
「・・・・・・」
即答するカイルにエナは返す言葉も無かった。
(このバカ・・・。幼年学校の頃『大人になったら一緒に宇宙に行こう』って約束したのに・・・。私、その言葉を信じてずっと待ってたのに・・・。)
そう思いながら思わず涙ぐんでしまうエナ。二人はいわゆる幼馴染み同士だった。エナは美少女だったので同年代の男達から数え切れない程の誘いを受けたのだが、カイルとの約束を信じて全て断って来た。それが肝心のカイルがこの調子なのだ。
「・・・ん?どうした、エナ?目にゴミでも入ったのか?」

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