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銀河を翔る助平
官能リレー小説 - SF

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銀河を翔る助平 17

そう言うとカイザーはアルベルトの刃を弾いて後ろに飛び退いた。
「小憎たらしい海賊風情が!士官学校で慣らした私の剣技であの世に送ってやる!」
アルベルトは剣を構える。カイザーはニッと笑って言った。
「面白ぇ!かかって来やがれ!」
「はあぁぁー―――っ!!!!」
アルベルトはカイザーに向かって剣を突き出した。

キイィンッ

鋭い金属音…一瞬だった。次の瞬間にはもう弾き飛ばされたアルベルトの剣が艦の床に突き刺さっており、彼の喉元にはカイザーのナイフが突き付けられていた。
「……わ…私の負けだ…殺すが良い」
さすが貴族だけあって負けを認める時は潔い。
「いいや、殺さねえ。それより配下の全軍に直ちに戦闘を停止するよう命じろ。お互いこれ以上犠牲を増やしたくないだろう?」
「…解った。しかし我々は正規軍ではない。私のような軍務経験者も居るが多くは有志の民兵で…」
「何が言いてえ?」
「…つまり、情け無い事だが、私が停戦せよと命じても部下達が従うかどうか分からないのだ」
「なんだ、それなら俺の得意分野だぜ。だいたい海賊団なんて、どこの馬の骨とも知れねえ有象無象の集団だからな。要は言う事を聞かせりゃ良いんだろ。さあ、ブリッジに案内しろ!」

…そして義勇軍艦隊の全船にアルベルトによる停戦命令が下された。ところが…

―ある船のブリッジ―
『…停戦せよ。繰り返す。全船ただちに戦闘を停止せよ…』
「停戦だと!?ふざけるな!!」
「王女様を取り戻し、国賊ヒスターを倒すまで我々の戦いは終わらぬのだ!!」
「元より我ら死は覚悟の上!例え勝ち目の無い戦いだとて最後の一兵となるまで戦い続けるぞぉぉ!!」
「「「オオォー――――ッ!!!!」」」
義勇軍は士気だけは旺盛だった。元々ヒスター政権下で鬱憤を募らせていた王政派貴族達や、その前からずっと苦しめられて来た貧民達が主な構成員なので仕方ない。ここに来て爆発したという訳だ。止めようが無い。

するとモニター上のアルベルトを押し退けてカイザーが姿を現した。
『義勇軍将兵諸君!俺はカイザー!カイザー海賊団頭領、カイザーだ!』
「カイザーだとおぉぉ!?」
「おのれ姫様を汚した逆賊めぇ!!」
突然の敵の親玉の登場に全員が憤激した。中にはモニターに向かって銃をぶっ放す奴まで居る。だが次の瞬間、カイザーの後に続いて姿を現した人物を見て、全員がハッと息を飲んだ。アイナ王女だ。
『義勇軍の皆さん、どうか銃を収めて戦いを止めてください。私はこれ以上ロシュフォートの民が傷付く所を見たくありません…どうか!どうかお願いいたします!』
アイナ王女は全裸のまま、自身の豊かな胸の前で手を合わせて涙ながらに哀願した。その姿は淫らにして美しかった。
「「「……」」」
もう誰も声を上げる者は居なかった。

かくしてカイザー海賊団と義勇軍との戦闘は収束した。事実上カイザー海賊団の勝利だが、あくまで双方合意の上での“停戦”という形が取られた。

カイザーがアイナを盾にした事が結果的に効を奏し、旗艦での白兵戦における犠牲者数は海賊、義勇軍、双方極めて少なかったし、アルビオン軍の潜宙艦に雷撃された義勇軍の船も機関部を破壊されて航行不能にされただけで、他の部分はほぼ無傷だった。


戦闘終了の後、カイザーはトーテンコップにアルベルトほか数名の義勇軍の幹部を招き、協議の場を設けた。
「シュヴァーリエ侯爵閣下、ようこそ我が宇宙戦艦トーテンコップへ!」
艦内発着場でアルベルトを出迎えたカイザーは大仰な動作で(彼がやると半ばおどけた感じだが)うやうやしく一礼した。
「…下手に出るのは止めてくれカイザー、惨めになる。私の事はアルベルトで良い」
「そうか、それじゃあアルベルト、展望室に食事の用意がある。食べながら俺達の今後について話そう。海賊流スペシャルディナーでおもてなしするぜ」

会食は艦底部から突き出した形で付属している展望室(ちょうど飛行船のブリッジのような物を思い浮かべてもらえれば良い)にて行われた。壁が360゜全面ガラス張りになっており、広さはちょっとした体育館ほどもある。アルベルトは感心してカイザーに言った。
「こんな部屋まであるとは…来賓用の応接フロアなんて正規軍の軍艦並だな。なぜ海賊がこんな立派な戦艦を持っているんだ?一体どこから盗んで来た?」
「人聞きの悪い事言うな。このトーテンコップは俺の何代か前の先祖がどっかの国の軍から払い下げられたのを財産はたいて購入して海賊船に改造したんだ。確か艦齢は300年以上になるらしいが…」
「正確には284年です」
ロッソが補足する。

ちなみに艦隊の他の艦は、同じく売りに出されていた中古艦を購入したり、一から新造したり、戦闘で勝った相手から鹵獲(ろかく)したりと色々だ。
鹵獲した艦が一番多い。一番酷いのはマティアが艦長を務める高速戦艦エンレイターで、製造元の星から注文先の星へと回航していた所を襲って奪い取ってしまった。もっともそんな事は尋ねられでもしない限り話さないが…。

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