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銀河を翔る助平
官能リレー小説 - SF

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銀河を翔る助平 14

映像は加工せずにそのまま複製し、ロシュフォート領内に行きわたるのに流通や通信システムにより、即時に行きわたった。
やはり市民は革命政権を支持してなく、政権とは全く無関係である義勇軍を繰り出してアイナ王女を救うべく立ちあがった王政派貴族軍の動きは早かった。

「動いたか」

「王政派貴族軍の殆どはロシュフォート建国時に苦楽を共にした家柄……アイナ王女がどうなっても取り戻すつもりでしょう」

「ここからはカイザーのアドリブだ、爺、首相を呼んできてくれ」

「はい」


一方その頃、革命政府の本部が置かれている旧ロシュフォート王宮…かつて国王の執務室だった部屋。先程から恰幅の良い貴族風の中年男が苛立たしげに行ったり来たりしていた。
「えぇい!一体全体どうしてこんな事態になったのだ!?」
そう怒鳴りながら勢い良く机を叩いた彼の名はロベルト・ヒスター、反国王派の貴族と軍部をまとめ上げてロシュフォートに革命を起こした王国宰相である。もっとも現在の地位は宰相ではなくロシュフォート新政府の首班という事になっているのだが…。
「ど、どうか落ち着いてください閣下…」
「左様、左様にござりまする。怒りは禁物、どうか冷静に…」
新政権の幹部…兵部大臣のデュラン侯爵と内務大臣のミラン伯爵が恐々なだめるがヒスターは茹で蛸のように顔を真っ赤にして怒り狂っている。
怒りの原因は三つ…王政派貴族軍(義勇軍)、アルビオン王国軍、そしてカイザー海賊団である。

今のところ新政府軍と義勇軍との間に砲火は交えられていない。義勇軍は新政権打倒よりも先にアイナ王女救出に動いたからだ。
だが時間の問題だろう。いずれカイザーと義勇軍とが衝突する。どちらが勝ってもアイナ王女を旗印にして、この王宮に攻めて来る事には変わり無いのだ。
王女は以前から国民に人気があったが今回の革命騒ぎの中で、いつの間にか市民達の間では反新政権の象徴のような存在になりつつある。
だが深刻なのは市民からの支持よりも軍の現状だ。平民出身の下級兵士達を中心に脱走が続出…どうも義勇軍に加わっているらしい。
そして全ての背後で糸を引いているアルビオン…何が狙いかは不明だが、落ち着いてなどいられる訳が無かった。

「そうだ!こうなったら殺し屋を雇ってアイナ王女を亡き者に…!」
ついに煮詰まったヒスターは非現実的な事を言い始めた。デュランとミランは顔を見合わせて嘆息する。
そこにノックの音が響き、若い士官が入って来て告げた。
「失礼いたします閣下!閣下に重要な提案があるという者が参っておるのですが…」
「重要な提案!?今それどころではないわ!」
「し…しかし、現状を打開し、しかも我々に勝利をもたらす策があると言っています」
「何を馬鹿な事を…」
「閣下!信用出来ませんぞ」
「勝利を……?」
デュランとミランは止めたがヒスターは少し考えて言った。
「…面白い、会おう!」
「か、閣下!?」
「危険ですぞ!それこそ敵方に雇われた殺し屋だったらいかがなさいます!?」
「やかましい!話を聞くだけじゃ」
ヒスターにとっては正に藁にもすがる思いだった。

士官は一人の男を連れて来た。
「どうも、ヒスター閣下。突然の訪問にも関わらず、お会いくださり嬉しく思います」
「前口上は良い!ワシラを勝たせる策とやらを早く聞かせろ!」
「まあまあ、そう焦らず。まずはお人払いを…」
「そうか、よし!お前達は出て行け」
「し…しかし…」
デュランとミランは暗殺の危険性を危惧していた。男を連れてきた士官が言った。
「大丈夫です。その男、武器の類は一切身に付けておりません」
「ならば私達は隣室にて待機しております。何かございましたらすぐにお知らせくださいませ」
皆は部屋を出て行き、ヒスターと男だけが残った。ヒスターはさっそく切り出す。
「して、その策とは何ぞや?」
「はい、閣下…」

二人の間にどのようなやり取りが為されたのかは当事者以外には知る術が無い。だが話を聞き終えたヒスターは、それまでの苛立ちが嘘のような実に晴れやかな表情をして言った。

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