GUARDIAN GIRL 48
玄武はリョウト自身どころか意識する動きの何倍も先をトレースしてくれた。
『よぉし…。』
そして内懐、つまり鞭の根本に近付けばその動きも捉えるは容易。
『捕った!』
玄武の左手が鞭を捕まえ、大きく弓を引く動きで右拳を黒獅子の顔面に叩き込んだ!
黒獅子の手から鞭が離れ、支えを失った機体は尻餅を突く姿で派手に大地を滑る…。
『うむっ!リョウト!』
『やっちゃえ!やっちゃえぇ!』
チヅルとトモエ、割愛するが司令室からも割れる様な歓声、初陣での一撃にリョウトの闘争本能が高揚してゆく。
…機体スペックは黒獅子より若干上か…しかし…
黒獅子のパイロットは、推測を立てながら一動作で身を起こす。
『坊や?ママから教わらなかったか?女の顔を叩くな…と!』
そして上段廻し蹴り、黒獅子の爪先がバックステップした玄武の装甲を掠める。
切り返しで足を踏み抜く様な蹴り下ろし、玄武が回避動作に身を捻った所へのショートフックも、僅かに装甲を揺さぶったのみで避けられた。
…格闘技術そのものは低いか…
一見して良いようにあしらわれている黒獅子のコックピット内には、どこか陰湿な笑みが漂っていた。
「せっかくの高性能な機体もパイロットが無能ではな…」
「何を!」
無能と罵られリョウトは黒獅子への猛攻のスピードをさらに上げる。
「機体の性能の差が絶対的な戦闘能力の差では無いことを教えてやるよ」
黒獅子は最小限の動きで玄武の拳をかわし、次撃へ転じるまでの刹那の隙に鋭い貫手の一撃を装甲の隙間へ穿つ!
「うぐっ」
高次元で玄武にシンクロしているリョウトは玄武の破損が痛みとして伝わってしまう。
「戦闘のイロハもしらぬ素人が兵士である私にかなうはずがなかろう!見ろ!」
「きゃぁぁ〜!」
「うわぁぁ〜!」
朱雀と青龍を拘束していた鞭が2機を締め上げる。
「やめろ〜!」
「はっ?やめろと言われてやめる馬鹿がいるか。お前は過信しそいつらの安全確保を蔑ろにしたんだ、その判断が今の状況を生み出した」
「うっ…」
「これを無能と言わずに何と言う!お前の過信が仲間を、世界を窮地に落とすんだ!」
「ぎゃぁぁ〜!」
「ぐわぁぁ〜!」
鞭から電撃が流れ、コックピットのトモエとチヅルを直接襲う。
「わかったよ…ボク、いや…オレがなんで玄武を動かせたか…」
「ほぅ?それがわかったところで無能な貴様になにができる!」
新たに生えた黒獅子の鞭が玄武に襲い掛かる。
「あぁ、オレは無能だ…でも、オレは男だ!惚れた女は何があっても絶対守る!世界とか大きすぎてわからないけど、二人だけは…トモエとチヅルだけはオレが守る!」
玄武は黒獅子へ向かい一直線に進む。