世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 100
「むやみやたらと暴れまわるな。
それもこちらが幾度となく言い続けてきた言葉のはずだが?」
「るっさい!それで?一体何の用さ!?
わざわざお小言言うためだけに来たんじゃないんだろ?」
恐竜はふてくされたようにそう言うと、忌々しげにくわえていた槍を解放する。
お小言を言うつもりなら、被害が出る前に止めに来るはずだからだ。
するとプテラ・ナイトは槍を収めながら用件を語り始めた。
「我々の兵隊が壊滅した。やったのはアパレント・アトム。
最近出てきた同じ穴の狢だ」
「ケンカを売ってきたの!?」
その言葉に恐竜が目の色を変えて反応する。
しかしその目にあるのは怒りや憎悪などではない。
歓喜。絶好の遊び相手やオモチャを見つけた子供のように目を輝かせながら、恐竜はプテラ・ナイトを問い詰めた。
「ソイツら強い!?規模は!?何日くらい楽しめそう!?」
「駆け出しなんで規模まではわからんが、それなりの実力はあるようだ。
捕獲部隊とは言え、ほとんど抵抗させる間もなく壊滅させているからな」
「ガチの戦闘組織ってわけか・・・。いい。それ、そごくいいよ・・・!!」
「この一件でトライアッドの一角『リザード・バンディット』は壊滅状態。
残る『ヒューマンエラー』から、実行部隊であるザウルスペクターに依頼が来た。
手段問わず敵を潰せ、とな」
「うふふ・・・いいじゃない。実にボク好みの展開だよ。
ならお望みどおりにしてあげようじゃない」
恐竜はそう言いながら、ゴキバキ音を立てながら身体を変形させていく。
恐竜のフォルムは縮み、徐々に人型に近い姿に変わっていく。
「今度の相手はどれくらいボクを楽しませてくれるんだろ?
ああ、楽しみだなぁ・・・♪」
恐竜から少年へと姿を変えたこの怪人の名は『レックスライダー』。
人間との混合犯罪組織『トライアッド』の一角、『ザウルスペクター』の頂点に立つ人物である。
彼はこれから始まるであろう、阿鼻叫喚の戦いに身体を震わせ、雄叫びを上げた。
新たな狩りの獲物の登場への歓喜の悲鳴を・・・。
――――
それから次の日。啓太はクロックに呼ばれ、早朝のミーティングに参加していた。
この間の敵の襲撃と今後の方針、そして以前捕まえた野良怪人たちの処遇についてなどのことらしい。
堅苦しい会議など本当ならゴメンなのだが、大見得を切った手前、面倒くさいのをガマンして出席している。
クロックたちもそれを察しているらしく、会議は啓太にもわかりやすいように工夫されている。
もちろん本人は彼女らの影の努力など知るよしもないのだが。