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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 83

しかしそれは裏を返せば、何かを犠牲にしてでもかなえたい夢や希望がないことを意味する。
何かを犠牲にする覚悟がないから、土壇場でなければ危険を冒そうとしない。
いわゆる『臆病者』の気があるのだ。
だからクロックは言う。
話術を巧みに操り、啓太が危険を冒さざるを得ないように。
クロックはふっと微笑むと優しく語りかける。

「ご安心を。別に世界を敵に回せとは言いません。
 ただ、この三方町一帯が啓太様のものだと幅を利かせればいいのですよ」
「だ、だからオレはそんなこと・・・」
「別に町を支配なんてしなくていいのですよ。
 この町には強力な組織がいる。
 そう思わせるだけでいろんな組織が手出しできなくなるんです」

クロックは啓太が望む平穏をちらつかせ、巧みに啓太の関心を引く。
事実、啓太はクロックの甘言に惑わされ、反応している。
無知な糸田親子にいたっては、すっかり彼女の話に聞き入っている。
クロックはその反応に満足しつつ、話を続ける。

「しかしそのためには力が必要です。
 この町には強い組織がいるという実績が」
「・・・!!だ、ダメだ。そのために他人を犠牲にするだなんて・・・!」
「別に悪事をする必要はありません。
 ただこの町で悪事を働く人間や組織を追っ払ってしまえばいいのです。
 この町の人間たちも、我々が一般人に危害を加えぬ組織とわかれば安心するでしょう。
 何より、悪の組織を倒せば私たちのように使い捨てにされている怪人たちを救い、なおかつ平和を維持することができるのですよ?」
「う・・・あ・・・」

欲望と願望を同時に刺激され、啓太は言葉に詰まる。
それほどクロックの提案は魅力的だった。
しかしこれには落とし穴がある。
一度決起すれば町で暗躍する組織全てを敵に回すことになる。
それは目標到達まで啓太の嫌う戦乱が続くことを意味する。
さらに目標を達したところで、倒した組織の怪人たちを自分の組織に組み込めば、組織が大きくなり、それらを養うために結局領土拡大をするハメになる。
どっちにしても行き着く先は同じというわけだ。
しかしゴールとなる目的を明確化され、その規模が世界征服などとは格段に小さいことであるがゆえに、啓太はその落とし穴に気づかない。
ただその道を進むか否かでしか考えられないのだ。
悩み始めた啓太にクロックはさらに追い討ちをかける。

「さあ、ご決断を。今のままではいつまた同じようなことが起こるかわかりません。
 今回はたまたま死者こそ出ませんでしたが、次回は出ないとも限らないのですよ!?
 さあ、ご決断を!!」

急に決断を迫られ、啓太は呻く。迷う。悩む。
鈴と空に助けを求めようにも、すでにクロックの術中に落ちた彼女たちはクロックの側についたも同然。
あとは啓太が答えを出すだけだ。

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