世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 79
「警部。あなたの優しさは素晴らしい。それは私にはないモノです。
しかしその一時の優しさのために多くの犠牲が出る場合もあるのです。
そうでなければ私のようなものは最初から存在しない。
どうかご理解ください」
翔影はそれだけ言うと、何事もなかったかのようにその場を立ち去る。
残された警部は、そのやりきれない思いをぶつけるように壁をたたく。
「・・・くそっ!」
その言葉は翔影の言葉を否定できない自分への怒りか、救えなかった仲間に対する無念か。
鬼瓦警部の気持ちは誰にもわからなかった――。
――――
一方。最近めっきり影の薄くなった主人公(啓太)はと言うと。
「う・・・う〜ん、う〜ん・・・!」
ベッドの上で呻いていた。
・・・まぁ回復係の鈴と空が母乳を飲ませようと4つの巨乳を押し付けていれば、呼吸できずに呻いてもおかしくないだろうが。
他の男が見たら、その場で殴りかかるようなうらやましい光景ではある。
「啓太様・・・!しっかりしてくださいっ!?
ほら、啓太様の大好きなおっぱいですよ!?」
「しっかり飲んでください・・・!
ほら、私たちのミルクはまだたくさんありますよ?」
「うぶ、うぶぶ・・・ッ!?」
・・・訂正。これはうらやましいというより新手の拷問だ。
いくら治療効果があるからって、デカイ乳房を押し付けながら大量の母乳をムリヤリ飲ませるなんて、確実に相手の息の根を止めにかかっているとしか思えない。
とか言っている間に啓太の顔がどんどん青ざめてきた。
「・・・ッ!?〜〜〜ッ!?〜〜〜ッ!!ぷはっ!?
な、何だ何だ!?何でオレ、いきなり鈴たちに乳殺されかかってんのさ!?」
あ、起きた。
いくら男のロマンでも、やっぱり自分の命は大事だったらしい。
啓太は突然の乳圧地獄に混乱していたが、頭がハッキリしてくるうちに徐々に気を失う前のこと思い出す。
自分があの銃を使う敵に撃たれ、重傷を負ったときのことを。
「・・・ッ!!」
全てを思い出した啓太は、あわてて服をめくって撃たれた部分をのぞくが、そこには傷はおろか傷跡すら残っていなかった。
鈴たちの母乳だけとは思えないから、おそらく夢たちが治してくれたのだろう。