世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 75
「・・・ッ!!」
司令官の言葉に、鬼瓦は苦々しげな表情を浮かべる。
それ以上噛み付くこともできず、殺意すら感じさせる視線で司令官をにらみつけていると。
「・・・・・・」
「・・・さ、ゴルディオス教官。行きましょう」
エルカイザーとジャスティスに促され、鬼瓦は無念そうに部屋を後にした。
それは何もできない無力な自分への怒りに他ならない。
そして部屋には司令官と翔影、ウルトラスナイパーの3人だけが残される。
ウルトラスナイパーはこれからの展開に、まるで死刑寸前の死刑囚のように震えて怯えていた。
「・・・まったくずいぶんと好き勝手やってくれたね。
恐喝・暴行だけでも許しがたいのに、悪の組織とつながりを持っているとは。
これが世間に知られたら、どう責任を取るつもりなのかね?」
司令官・・・いや支部長は書類を片手に、資料を見た感想を述べる。
それはまるでウルトラスナイパーの罪状を読み上げる閻魔大王のようだった。
まさか協会でも下っ端の自分の事を、ここまで綿密に調べ上げられているとは思いもしなかった彼は、震えることすらできない。
世界の規律と平和を守る正義の味方が悪行に走る。
それは正義の味方としての、権利の剥奪だけでは済まされない。
全ての記憶と財産を奪われ、どこか遠くに飛ばされるか。
下手をすればこの場で処刑だってありえる。
間近に迫った死を前に、ウルトラスナイパーは必死になって反論する。
「ま・・・待ってください!!お、オレはまだアイツらに負けていませんッ!
み、右腕こそ失いましたが、それだけです!
ば、万全の体勢で望めば・・・!!」
「次は勝てる、と?
常勝無敗を当然としなければならない正義の味方が、常に完全武装して町を出歩くというのかね?
もはや滑稽を通り越して、哀れですらあるな」
「で、ですが!!
死んだはずのエルカイザーや負けたジャスティス・エクスキューショナーには何の処分も下りてないじゃないですか!?」
「何も処分を下していないわけではないよ。
彼らもああ見えて崖っぷちでがんばっているのだよ。
それに彼らは君のように悪行に走っていたわけではなかった」
「・・・ッ!ですが!オレはアイツらより強い!
オレのほうが奴らより利用価値があるんじゃないですかッ!?」
正義の味方にもランクがある。
それは知力や戦闘力、実績、知名度などを元に作られ。
ランクの高さに応じて彼ら正義の味方は、給料や権力などさまざまな恩恵を受け取ることができる。
確かに彼の言うとおり、ウルトラスナイパーはエルカイザーたちより上だった。
痛いところを突かれたというのに、支部長は顔色1つ変えずに『ふむ』と物思いにふける。