PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 59
 61
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 61

短い悲鳴の後、壁の向こう側まで吹っ飛んでいった。
それを見た啓太があわてて心の介抱に駆け出す。

「心ッ!?おいっ、大丈夫か!?」
「・・・・・・」

顔に空気弾の痕がついているが気絶しているだけで、大したケガはないようだ。
だが万が一のことを考え、啓太は空を呼んで治療を命じた。
そして突然の暴挙に、啓太は憤怒の形相で刀に怒鳴りつけた。

「どういうつもりだ、刀っ!?仲間にじゅうをぶっぱなすなんて・・・!
 死んだらどうするつもりだっ!?」
「・・・そう、ならないように手加減しました。
 心にも部下を助けたいという気持ちはあるでしょうが、啓太様を危険にさらす可能性がある以上、彼女にもここに留まっていただきます」

啓太に責められたことが苦しいのか、仲間を傷つけたことが痛いのか。
刀は苦しそうな様子で理由を明かした。
しかし啓太にはその表情を見てさらに納得の出来ない思いが増していく。
たとえどんな理由があろうと、仲間を撃つなんて間違っている。
それが自分を守ろうというためならなおさらだ。
正直、自分を大事に思ってくれるのはうれしいが、自分にその価値があるかと言われれば答えは『No』である。
おまけに自分には他人のために死ぬ、なんて度胸もない。
だけど今の自分には一般人だった頃にはない力を持っている。
不本意ながら悪の総統としての修行だってやっている。
少なくとも自分の安全くらいは自分で守れる。
そう啓太は思い込んでいた。その考えこそが危険なものであるとも知らずに。
だがその思い込みは啓太に『ある違和感』を気づかせることとなった。
それは今では懐かしい思い出となったあの頃の言葉。
レフトファンに攻め入ったとき、夢に教えてもらったことの1つであった。

(・・・あれ?じゃ、なんで刀はオレに武器を突きつけられるんだ?)

怪人たちは啓太を主人として鍛えているのに、なぜそれを台無しにするようなことをする。
少なくとも彼女らは一般生活に溶け込めるようになったとは言え、自立には程遠く、自分に強く依存していたはずだ。
そうして導き出された結果が、啓太にある行動を取らせることとなった。
それは自分の下僕となった怪人たちと暮らしていたからこそできる綱渡りのような大胆かつ危険な行為であった。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す