PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 58
 60
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 60


突然の暴挙ということもあり、恐怖と驚きで動けなくなる啓太。
それを見た刀は心の底で安堵のため息をつく。
刀が突然始めたこの暴挙。
実はこれ、啓太をここに足止めするためのハッタリ。
演技なのである。
一般人から怪人になり、悪の総帥として日々育てられている啓太は今とても危ない時期を迎えている。
怪人としての能力を得、中途半端に経験を積んだ啓太はうぬぼれやすい状況にある。
まして啓太は怪人を道具として割り切れない、優しすぎるきらいがある。
それはそれで美徳なのだが、今の状況では啓太自身を危険にさらす要素になりかねない。
そのことを理解している刀は、このような暴挙に打って出ることで足止めと時間稼ぎをしているわけだ。
もっとも、演技であっても主人に武器を向ける行為は彼女にとって多大なストレスを与えている。
うっかり啓太を傷つけてしまいそうで、今にも剣を落としてしまいそうになる。
その可能性に身体が震えだすのを、刀は懸命にこらえていた。
一方の啓太も仲間に剣を突きつけられ、大いに混乱していた。

(く・・・くそっ!?なんで怪人ってのはこうもおバカそろいなんだよっ!?
 夢たちがヤバいってのに、何で助けに行っちゃいけねーんだよっ!?
 しかも目が本気だしっ!訳わかんねえっ!?)

どうやら刀の推測は当たっていたらしく、ある程度の実力をつけた啓太は自分に仲間を助ける力があると思い込んでいるようだった。
もっともさすがに自分を犠牲にして行くにはまだ覚悟が足りないらしく、すぐに動くことができないようだ。
この時点で刀の脅しは十分に効果があったと言うべきだろう。
しかし彼女は忘れていた。
効果があるのは啓太1人だけで、怪人、それも戦闘型の怪人には通用しないことであるということを。

「な・・・んですって・・・!?」

襲撃があったとの情報に衝撃を受けた人物が、よろよろと前に出る。
この店を任されていた店長の心だ。
彼女は啓太が剣を突きつけられていることなど、気づいてもいない様子で口を開いた。

「そんな・・・冗談でしょ?店に・・・襲撃?何かの冗談でしょ?
 ねえ、刀。そうだと言ってよ・・・?」
「残念ながら事実だ。オマエの部下からの情報だ。
 それに何より・・・私がこんなことを冗談で言えると思うか?」
「―――ッ!!」

その瞬間、壊れたおもちゃのように動いていた心が弾かれたように走り出す。
向かう先は刀の背後にあるエレベーター。
どうやら地上に戻って部下を助けに行くつもりらしい・・・が。

ボシュッ!

「ギャッ?!」

刀が左手の銃口を心に向けると、ほとんど近距離で心の顔面に空気弾を撃ち込んだ。
何も見えなくなっていた心はそれを避けきれずにまともに食らい・・・。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す