世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 7
その言葉に今度はメイド少女たちが動揺する。
『なぜ目の前の男は自分たちの名前を知っている』と。
「どういうことだ、それは――!?」
驚く彼女たちの後ろから、聞き慣れない男の声が聞こえてきた。
「あ・・・ご主人、様」
メイドたちの間を割って現れたのは、黒で縁取りされた白銀の鎧に身を包み、赤い裏地の紫マントを羽織った騎士のような男だった。
様づけで呼ばれていたことから、どうやらこの男が彼女らの司令官、もしくは主のようだった。
「正義の味方のアンタが、彼女たちのことを知っているのか!?」
「・・・!?」
男の態度に翔影は違和感を覚える。
彼は目の前の男がエレメンタルの3人をさらい、洗脳か何かをしたのだと思っていたからだ。
しかし鎧騎士の態度を見る限り、とてもうそや演技とは思えない。
これは一体どういうことなのか――?
混乱しきる2人に割って入ったのは、話の話題に上がっているエレメンタル・ガーディアンの3人だった。
「リベリオン様、だまされてはなりません。
我々は元は野良怪人。正義の味方とつながりなどあろうはずもありません」
「なっ・・・何を言っているんです!?
私がわからないのですか!?」
「それはこっちのセリフだよっ!
ボクたちはキミとは初対面だよっ!」
「ナンパでしたらお断りさせていただきます。
私たち3人、すでにご主人様に全てを捧げると決めてますので」
敵と思われる男に組し、あまつさえ味方である自分に初対面と言い切って刃を向けるエレメンタル・ガーディアン。
敵と思われる男の動揺っぷりといい、さすがの翔影も混乱せずにはいられなかった。
混迷の深まる現場で、エレメンタル・ガーディアンだけが動いていた。
「・・・どうやら別れの時間が近づいてきたようですね」
「え?あっ!」
その時になって、鎧騎士と翔影は燃え盛る炎の向こう側に見える人影の群れに気づいた。
どうやらようやく近所の住人たちが動き出したらしい。
正義の味方になってから一度たりとも犯したことないミスに、翔影は思わず舌打ちした。
しかし半年間も行方不明になっていた仲間をここで見失うわけにもいかない。
この場を去りたくもあるし、彼女たちを捕まえたくある厄介な状況が形成されつつあった。
「……悔しいですが、この場は一時撤退が妥当ですねそれでは失礼いたします。」
翔影は悔しさを残しながら、そう言うと一瞬にしてその場を消え去る。
「おい…ちょっ話がぁ!!」
消えさろうとする翔影に詰め寄るリベリオン。
「リベリオン様、一旦撤退なさいましょう。今宵の目的は達成し、グラップルも治療が必要ですわ。それにここで我等の正体がばれるのは危険ですわ。」
緑色に輝く杖を持つ少女はリベリオンに撤退を勧めた。
「おい、ウィンド待ってくっ!!」