世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 54
「オレたちのことをすっかり忘れている夢たちに、オレらのことを怒る資格なんてないよ。
それにおまえらだって、店長のクスリでどうにもならなかったわけだし」
・・・この男、いくら上のことを知らないとは言え、夢たちに何たる言い草か(怒)
部屋の隠し扉では刀が啓太の安全を守るために、今も警護しているというのに。
ここは作者権限で天誅でも食らわせたろか?
そんなときだ。空・薙・彩夏とまったりしていた啓太が、何かに気づいて動き出した。
どうしたのだろう?もしかして隠し扉に気づいただろうか?
その歩みはあるところでピタリと止まる。
「おはよう、店長。お目覚めはいかがかな?」
「ッ!?」
その言葉に店長だけでなく、空たちもがビクリと反応する。
無理もあるまい。彼女は薬使い。
どんなところにいても、体内で飼っている虫を使って薬を盛ることができる。
いくら主人と結ばれることができたとは言え、警戒するのはむしろ当然のことだろう。
「くっ・・・!!」
タヌキ寝入りを見破られた店長の心は、ここまでとばかりに起き上がって、腕から数匹の蜂を飛ばす。
主人に手を出せない以上、狙うのは当然、空たち。
しかし飛ばした蜂たちが空たちを襲うより早く、啓太が決定的な一言を告げる。
「心。『今すぐ抵抗をやめろ』」
「・・・ッ!?」
その瞬間、心はビクッと身体を震わせ、動きを止める。
飛ばした蜂たちが急に飛ぶ力を失い、ポトポトと床に落ちた。
第1部から読み始めた賢明な読者諸君ならもうおわかりだろう。
啓太はこの時、久しぶりに所有物である怪人に命令を下したのである。
主人の道具に過ぎない怪人は、どんな理由があろうと絶対に主人の命令に逆らうことはできないのだ。
今まで怪人と対等に付き合ってきた啓太が、まさかこのような手段に打って出るとは思わなかった心は、驚きと恐怖にその身を震わさずにはいられなかった。
「・・・懲りないヤツだな、心。あれだけオシオキされてもまだ足りないのか?」
「あ・・・あ・・・あ・・・」
「できればこんな手は使いたくなかったけど・・・。
これ以上空たちをくるしめようってんなら、話は別だぞ?」
この時になって、心はようやく自身の敗北を悟った。
主人としての権限を出された以上、もはや心に勝ち目などない。
もっとも心は性奴隷となった空たちを捧げて、あわよくば自分たちも抱いてもらおうと思っただけなのだが。
それがここまで啓太の怒りを買うとは思わなかった心は、その場で土下座をして許しを請うた。
「もっ!ももも・・・申し訳ございませんッ!?
わわ、私はただっ!けけけ啓太様に喜んでいただこうと思いまして・・・ッ!!」
「・・・オレを楽しませたいのなら、時と場所、やり方をちゃんと選ばないかっ!?」