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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第2部 5


彼女・・・名前をグラップル・キャプチャーと言うのだが、彼女は翔影の推測どおりカンガルーの怪人であった。
武器は五体を凶器とする徒手空拳。
能力は胸に所にある、黒い線のような隙間から一定の体積のものを自由に出し入れできることだ。
今の組織に所属する前は、怪人にする材料集めを担当していた怪人である。

(まさか捕獲用怪人の私の前に、こんなに強い相手が来るとは、私も運が悪いわね〜・・・。
 せめて大したことない相手と侮ってくれればまだ逃げるチャンスもあるんだけど)

ちなみにグラップルは誤解しているようだが、事態は彼女が考えているより少し上を行っている。
それは翔影との実力の差が歴然たるものという事実。
彼は正体を知られぬように黒装束を現代風にアレンジした服で顔を隠しているが、実は彼、変身すらしていないのである。
手持ちの武器を頼りに、生身の身体でやり合っているのである。
彼はたまたま別件でのパトロール中にタマゴを見つけ、捕獲したに過ぎない。
グラップルとの遭遇に至っては偶然に次ぐ偶然としか言いようがない。
そんな強敵と遭遇したのだから、彼女の運のなさも相当なものである。
そして彼女の不幸は、ついに牙もあらわに襲いかかった。
再び翔影が手裏剣の嵐を投げつけてきたのである。
しかも初撃よりも格段に速い速度で。

「ちいっ!?」

ガキィンッ!!ガキガキガガガガガ・・・!!

予想以上のスピードに面食らった彼女は、拳を盾に手裏剣を叩き落とす。
しかし全てを叩き落とすには至らず、彼女の柔肌にいく筋もの赤い線が鮮血をインクにどんどん記されていく。
手裏剣全てを叩き落としたグラップルは、すぐさま視線を投げつけた相手に向ける。
しかしそこにはすでに翔影の姿はない。
また足元か?そう思って下を向いた、その時。

トン・・・

と背中から何か大きいものが押し付けられるのをグラップルは感じた。瞬間!

ドンッ!!

「がっ!?」

すさまじい衝撃が駆け巡り、グラップルは吹き飛んだ。
彼女の身体は地面に不時着し、燃え上がる炎にぶつかる寸前まで滑っていく。
グラップルはまともに呼吸ができず、ゲホゲホとむせたところに後ろから首筋につめたい感触が走った。
翔影がグラップルの首筋にナイフを押し付けたのだ。

「・・・まあまあの実力です。アレを防げるとはなかなかの組織の者とお見受けします」
「そ、れはっ、どう・・・もっ・・・!」
「しかしそれほどの実力を持つ組織が、なぜこのような小物を追うんです?
 私にはそれが理解できない」

翔影は右手のタマゴをまじまじと見ながら、自分の意見を口にする。

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